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我が輩は野良犬である5

2012/01/08 Sun 01:17

              7

そいつはさ、いきなりやって来たんだよ。

あれは何時頃だったかな、ミキちゃんがまだ店行ってる時だったから、多分十時頃だったと思う。

その日もやっぱりミキちゃんは部屋の鍵を閉めずに店に行っちゃったんだけどね、我が輩がいつものように宿敵のアンパンマンと戦ってると、いきなり玄関のドアがガバッ!って開く音がしてさ、「ミキ!おい!」って玄関で誰かが怒鳴ってんだよね。

ったく誰だよこんな夜遅くに……ってな感じで我が輩が玄関に行くと、ものスゲェ物騒な顔した男が玄関の下駄箱ン中を覗いてたんだ。

んで、その凶悪ヅラした男は「やっぱりミキの部屋だ……」なんて言いながらミキちゃんのサンダルなんか見てるわけよ。

我が輩はおっかなかったけど、一応、番犬として「こら!誰だ!」って吠えてやったんだよ。
そしたらそいつ、ギッって一瞬我が輩の顔を睨んでさ、そんで「ミキは?」って犬の我が輩に聞くのよね。

おまえはムツゴロウか!って突っ込み入れながらも、「店だよ」って答えてやると、そいつは我が輩の言葉が通じたのか「店か……」なんて呟いて、そんで「ま、いっか、ここで待つか」なんて言いながらドカドカと部屋に入って来たんだ。

「おい!なんだよ勝手に入って来んなよ!」と、我が輩が猛烈に吠えまくると、そいつ、なんと我が輩をドカッ!と足蹴にしやがってね、んで、図々しくもベッドの上にゴロンと横になりやがった。

そんな足蹴くらいでビビる我が輩じゃねぇよ、こちとら伊達に薄汚ねぇ隅田川で産湯を浸かってねぇんだ、「ガウガウガウ!」って牙剥き出しにして吠えてやったよ、「咬むぞ!」って意思表示しながらね。

そしたらさ、あの野郎、大人げない野郎でさ、本気になって怒って来ては、いきなり我が輩の首根っこ掴むと「っるせぇな……窓から捨てるぞ」なんて言いながら窓開けやがるだろ、我が輩、マジに小便洩らしちゃってさ、まいったよホント。

ま、なんとか捨てられずに済んだから、我が輩は素早くベッドの下に逃げ込んで、あとはジッと大人しくしてたんだけどね、そいつは部屋の中を散々荒らした挙げ句、部屋中を滅茶苦茶に散らかした後、台所に置いてあった小皿でシャブを溶かし始めたんだよ。

今までにも何度かシャブを打つシーンは見た事はあったんだけどね、ほら、隅田川の公園にはシャブやってる野郎がウヨウヨしてたから、でもこう目の前ではっきりと見るのは我が輩初めてだったよ。

何が入ってんのかワケがわかんねぇイレズミを曝け出してさ、腕に注射器の針をチュッと刺すんだな。
男はしばらくの間、ふぅー……ふぅー……って深呼吸するように口で息吐いてたんだけど、そのうちパキッ!と元気になって目なんかキリリッとさせて立ち上がると、いきなりセッセと掃除し始めるんだもん、もうビックリしたよ。

その掃除の手捌きってったら前回の健作なんか目じゃないね。
まず床を雑巾掛けする手の動きが違う。
メチャクチャ早いんだよこいつの動きは。

ただね、よーく見てみたら、同じ場所しか拭いていないんだよね、床の一点しか。
そこにどんな汚れがあるんだろうって我が輩も不思議になって覗いてみたんだけど、別に全然汚れてないの。フツーに綺麗な床だよ。
なのにヤツはその部分だけをセッセと磨いてる。

コイツ、シャブ喰ってフツーに狂ってんだよね。

「床が腐ってんだよな……」と呟きながら、全然腐ってなんかいない床をセッセと拭くその奇怪な行動は、結局3時間程繰り返された。

深夜の2時頃になって、マンションの下にタクシーが止まったんだよ。
きっとミキちゃんだなって思いながら、我が輩は、どーか男を連れて来ませんように……って祈ったね。

そしたらそいつ、なんとピタッと雑巾掛けの手を止めてさ、窓の方見ながら「ミキだな……」なんて呟いたんだよね。
人間の耳じゃ下のタクシーの音は聞こえるはずないのに、こいつはピタッと当てやがった。
我が輩は「マジ?」って驚いちゃったね、ホント。

それでも男は床拭きをやめなかったね。
すぐにまたゴシゴシと床を拭き始めた。

コツコツコツ……というミキちゃんのハイヒールの音に、時折ニヤッと笑いながら必死になって床を磨いていた。

「……ただいま……」
ってミキちゃんが玄関に来たからさ、我が輩はサッ!とベッドの下を飛び出して玄関にまっしぐらだよ。

「ミキちゃん!シャブ中が勝手に掃除してるぞ!」と我が輩が吠えまくると、ミキちゃんは玄関の靴を見つめながら「誰かいるの?」と我が輩に話し掛けて来る。

んな事、犬の俺に聞いてどーすんだ、アンタはドリトル先生か!って取り合え得ずツッコミを入れながら「ヤバいぞ!危険だぞ!」と何度も我が輩は注意を促した。

と、その時、奥から「ミキかぁ~」っという男の声。

ミキちゃんは一瞬「えっ?」って顔で我が輩を見ると、「うそ!」っと驚いた表情になり慌ててハイヒールを脱ぎ捨てると、物凄く嬉しそうな顔をして部屋の中へと飛び込んで行った。

「のぶ君!」
部屋からミキちゃんの半泣きの声が聞こえて来た。
我が輩も劇的の再開シーンを見逃すまいと慌てて部屋に飛び込む。

ミキちゃんは、床の上でセッセと拭き掃除している男の背中に、まるでおんぶするかのように抱きついていた。

「どーして教えてくれなかったのよ……」
ミキちゃんの泣き声混じりの声に、男は「だって住所がわかんねぇんだもん……」と答えながらセッセと床拭きを続ける。

「中江さんにちゃんとミキの住所伝えておいたんだよ……」
「……だって中江のアホもパクられちゃったじゃん……」
「じゃあどうやってこの部屋調べたの?……」
「店長に電話して聞いた……」
「えっ?お店出る時、店長と話してたけど、のぶ君の事何も言ってなかったよぅ」
「……だって、店長に内緒にしてろって言ったもん……ミキを驚かしてやろうと思ってな……」

そこで初めて男の手が止まった。

2人は濃厚な舌吸いをおっぱじめやがった。

んで、そのままベッドに行って、激しいのをガンガンと始めたんだが、しかしこれが長いのなんのって、男は何度も射精してんだけど、それでもチンポはギンギンのままなんだよね。
結局、夜が明けて朝になって「はなまるカフェ」が始まる頃にやっと終わったって感じ。

その精力というかパワーは、さすが出所したてのシャブ中だなぁ……って感心したね、うん。

「……俺さぁ、ヤクザ、首になっちまったよ……」

セックス後の煙草をゆっくりと吸いながら、男は天井を見つめたまま呟いたね。うん、よくある光景だ。

「どうして?」
ミキは男の唇から喰わえ煙草を奪い取ると、自分もそれをプッと一服吸って尋ねた。

「シャブ中はもういらねぇんだとさ……」
男はまたミキちゃんの煙草を奪い取ると、それをプッと吸いながら答えた。

一本ずつ吸えばいいだろ……

「これからどーするの?」
そう言いながらミキちゃんが体勢を変える。昼の日差しに照らされたミキちゃんの裸体は水中を泳ぐイルカみたいに綺麗だったね。

「どーすっかな……俺、ヤクザしかした事ねーしな……」
そう言いながら男が体勢を変える。昼の日差しに照らされた男のイレズミは幼稚園児のクレヨンのラクガキみたいに汚かったね。

「ミキが養ってあげるから心配しなくていいよ」
ミキちゃんはそう言うと、スルリとベッドを抜け出し、冷蔵庫からトマトジュースを出した。
ついでに我が輩にも冷たい牛乳をくれた。

で、そんな事から、ミキちゃんと我が輩とそしてこのシャブ中の元ヤクザとの共同生活が始まるわけなんだが……

まぁ、それは、ひとことで言えば「滅茶苦茶」な生活の始まりだったんだな、これが……。

(6に続く)

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