スポンサーサイト

--/--/-- -- --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告

我が輩は野良犬である6

2012/01/09 Mon 00:07

               8

この男の生活というのはいつも決まっていた。

ま、だいたい一週間のうち月・火・水・木と一睡もせずに金・土・日の丸三日間は寝て過ごしていたな。
寝てる間はメシも食わん。かろうじて小便に起きるくらいだったが、しかし、そのほとんどは寝小便をもらしていたな、うん。

この男、寝ている時はいいんだけど、起きてる間は騒がしいのなんのって半端じゃない。
起きている間はとにかく「アニキが俺をデコスケにチンコロした」って言葉を何度も何度も呟きながら、部屋の掃除ばかりしてやがった。

完全に狂ってるよ。

ミキちゃんが稼いで来るからシャブの金には困らなかったみたいだけど、ある時、ミキちゃんが出勤してる時に運悪くシャブが底を尽きた。

とたんにイライラとし始めた男は、どこかに携帯で電話しながら「金は後で払うからすぐに届けてくれ!」なんて怒鳴ってんだけど、その携帯からは「おかけになった電話番号は現在使われておりません」っつー録音テープが聞こえて来るわけよ、我が輩は耳がいいからな。

でも男はそれに気付いてねーんだよな、録音テープ相手に「てめー!俺が破門になったからって舐めてんじゃネェゾ!おまえの首くらいいつでも取れんだぞゴラァ!早くシャブ持って来い!」って叫びまくってやがんの。

で、結局、彼の妄想の中では、その録音テープは「わかりました、すぐシャブをお届けします」なんて答えたんだろうね、そいつは録音テープに向かって「コマからだったら20分で持って来れるだろ、すぐ来いよ」なんて言って電話を切りやがった。

さぁ大変だ。
「まだか!まだか!」なんてイライラし始めた野郎は、隣りがうるさいとか下の部屋がうるさいとブツブツ言いながら壁とか床とかをガンガンと殴ったり蹴ったりし始めてさ、挙げ句の果てにはバケツに水汲んではそれをベランダからバシャー!と撒き散らすんだよ。
それを2時間くらい続けてんの。しかもド汚ねぇイレズミ曝したパンツ一丁で。

途中でミキちゃんが帰って来たから良かったけどさ、あのままいったらあの野郎は確実に通報されてただろうな、ま、我が輩はそのほうが良かったんだけどね。

そんな事があってから、心配したミキちゃんはシャブをまとめ買いするようになったんだけどね、しかし、それが逆効果だった。

このバカは、シャブがあればあるだけ打っちまうんだな。
ホントにトホホな野郎だよこいつ。

ミキちゃんがお店に行くと、急いでシャブを取り出して大量に打つわけよ。
それがどのくらいの量なのかは我が輩はわかんねぇけど、多分、いつもの倍の量くらいだと思うよ。

そうすっと、すぐに目をパキパキにさせんだよね、こいつ。
何が嬉しいのかケラケラと笑いながら部屋中をスキップして走り回ったかと思えば、いきなり「誰だ!」なんて言って天井をジッと見つめたりして。
そして「そこで何やってんだ!」なんて怒鳴っては灰皿とかを天井にぶつけ始めるんだけど、こうなるともう大変だよ、暴れまくって。

あれって、天井に誰かが隠れてると本気で思ってんだよね。
「上田か!」とか「松浦だろ!」とかって知り合いの名前を挙げてるうちはまだいいんだけど、これがそのうち「ロシアのスパイか!」や「北朝鮮か!」なんて国際的に発展して来ると手が負えない。

灰皿や週刊誌を投げるくらいじゃ勝てないと思うんだろうね、なんせ相手は国家だから。

んで、台所から包丁持ちだしては「ゴラァ!」なんて叫んだりして、そのうちベッドの上でピョンピョンと飛び跳ねながら天井を刺し始めるんだよ。

んで、包丁があんまり深く刺さり過ぎちゃって抜けなくなると、今度は部屋の中で焚き火を始めるんだよな、このキチガイは。
その頃になると、相手は国家から宇宙にまで広がっちゃっててさ、「宇宙には行かないって言ってるじゃねぇか!」なんて叫びながら、火の付いた週刊誌なんかを天井に向かって投げつけるんだよね。

ま、幸い、床に落ちた週刊誌なんかはすぐに消えちゃったりして火事になる事はなかったけどさ、帰って来たミキちゃんなんて「いったいどーしたの?」なんて言いながら部屋中に転がってる丸コゲの週刊誌を見つめてビビっちゃっててさ、ホント、可哀想なんだよね。

でも不思議な事にさ、ミキちゃんはこの男と別れる気はまったくないんだよね。
それどころか、そんな大騒ぎした後の男を「のぶ君、大丈夫だった?」なんて言いながら泣いちゃったりしてんの、心配して。
ま、オトコもオトコならオンナもオンナっつーことだよな、ったく。


でもね、結局そんなミキちゃんついにおかしくなっちゃった。
当然だよな、明け方に突然「俺は本当は空を飛べるんだ」なんて言いながらベランダから飛び降りようとするキチガイと暮らしてんだもん。

あれは確か、稼ぎ時の土曜日に店を無断欠勤した時だったよ。

その日は朝から男の様子がおかしくてさ、ミキちゃんに「俺が懲役行ってる間に何人の男と浮気した!」なんて怒鳴りまくってるわけよ。

最初のうちはミキちゃんもあんまり相手にしてなかったんだけどね、ミキちゃんが出勤準備で風呂に入った時だよ、この男は、ミキちゃんの携帯を勝手に開くと、男の名前で登録している番号に片っ端から電話し始めたんだよね。

ミキちゃんの携帯は、いわゆる「客電」っつーのと分けていなかったから、さぁ大変だ。
片っ端から客のケータイに電話し始めてさぁ、客はミキちゃんからの同伴依頼かと思って「もしもーし」なんてウキウキ気分で出るでしょ、そしたら急にドスの利いた声で「おまえ、ミキとヤッただろ?」なんて声が飛び出して来るから、ありゃあさぞかし驚いてただろうね、あいつら。

で、「俺ぁミキの旦那だけどよ、ミキに手出した慰謝料払えや」って恐喝始めやがんのねこのバカ。
相手が一方的に電話を切ると何度も何度も掛けたりして「今からてめーの会社に行くぞゴラァ!」なんて凄んだりしてんの。

頭にバスタオル巻いたミキちゃんがソレに気付いた時には、もう30人くらいの客に電話してしまった後だった。

あん時ゃ、さすがのミキちゃんも怒ったね。
怒るっつーよりも泣き崩れてたよ、私が苦労して捕まえた客をどーしてくれるのよー!なんて叫びながらパンツ一丁で泣きわめいていた。

そん時だよ、あいつの目が急に変化したのは。
今までもね、小ちゃなケンカは何度もあったんだけど、その度に結局はその男が「ミキ……ごめんな……」なんて優しい言葉掛けてたりしてたんだけど、今回はちょっと違った。

そいつの目、天井に包丁突き刺してる時の目になってんだよね。

いきなり「お前もあいつらの仲間だったんかー!」なんて叫んだと思うと、いきなりミキちゃんの頭の上にステレオを投げつけたんだよ、手加減無しにズドーン!っと。

ミキちゃん、髪洗ってバスタオル巻いてたからそれがヘルメットの代りになったんだろうね、幸いに怪我は大した事はなかったんだけど、それでもあんな鉄の塊をおもいっきり投げつけられたもんだから、頭がフラフラっと来たんだろうね、その場に倒れちゃったんだよ。

倒れてるミキちゃんのパンツを降ろした男は「ここか!ここをアイツらに貸したんか!」などと叫びながらミキちゃんのアソコにペッペと唾かけて、んで、チンポなんか突っ込んで犯し始めたんだよ、この外道。

泣き叫ぶミキちゃんの顔をボコボコに殴りながら腰振ってるそいつの顔は、もう人間の顔じゃなかったね。
チャイルドプレイのチャッキーが変身した時みたいな顔してた。

で、我が輩は何も助けられネェし、とりあえずベッドの下に避難してたんだけど、そこからミキちゃんの泣き叫ぶ顔が真正面から見えるんだよね。

あんなに優しくて天使みたいなミキちゃんの顔がボンボンに腫れてさ、クリックリの目なんか爪楊枝みたいに細くなっちまってた。
顔中あざだらけにされてアンパンマンみたいに腫らされてレイプされたミキちゃんは、挙げ句の果てにシャブを打たれた。

その頃になると、もうミキちゃん抵抗してなかったね。
グターッとした体を横たえたままジッと我が輩の目を淋しそうに見つめていたよ。

んで、夜中までそのまま犯し続けられてたわけだけど、その間、男は「誰が俺をデコスケにチンコロしたかわからなかったが、今ようやくオマエだったって事がわかったよ」なんてブツブツ言いながらフン!フン!と腰を振ってるわけよ、この被害妄想野郎は。

で、このまま行くと最後にはミキちゃんが殺されちゃうんじゃないかと我が輩は心配してたんだけど、そこに救世主が現れた。

店を無断欠勤したミキちゃんに何かあったぞ?って不審に思った店長が部屋に様子を見に来たんだな。

部屋の鍵はいつもの如く閉まってないからさ、店長は「ミキちゃんいるぅ?」なんて言いながら勝手に部屋ん中に入って来た。普通ならそんな事するような人じゃないんだけど、なんかこん時は胸騒ぎがしたんだろうねこの店長も。

で、部屋のドアを開けた店長は絶句だよ。
アンパンマンみたいに顔が腫れたミキちゃんが、イレズミ丸出しのシャブ中にスコスコと犯されてんだもんな。

男は店長に気付くと「なんだよ品川!勝手に入って来やがって!」と足下に転がっていたミキちゃんの携帯電話を投げつけた。

店長は左足をヒョッイと曲げて、いとも簡単にその携帯を躱すと「ミキちゃん、大丈夫か!」と叫んだ。

ミキちゃんもやっとその時店長に気付いて「店長~……」なんてまた泣き始めた。

男は腰を振りながら「帰れよ品川……おまえ調子に乗ってると店潰しちまうぞこらぁ……」とブツブツ言いながら何か投げる物はないかと辺りを手探りしている。

男がヌプっとチンコを抜き、クローゼット前に転がっていたガラス製の灰皿を取りに行こうとしたよ。でも、店長は「のぶさん……いい加減にしろよ……」とそう凄みながら男の手を止めた。
そのまま店長は男の首を押さえ込んではミキちゃんの血が飛び散る床に男の顔を捩じ伏せた。
「離せ品川!てめー誰のおかげで商売できてっと思ってんだ!おう!」
男は勃起したチンコをピコピコさせながらそう叫び、無残にも床に羽交い締めにされた。
店長はギロッと目を見開くと、「畠山の組長だよ。畠山の組長のおかげで商売させてもらってんだよ、破門になったあんたにはもう関係ない事でしょ」と、唸るように呟きながら恐ろしい力で男を見下ろす。
さすがだSM番長だ。

男は床に足をバタバタさせてもがいてた。身体が動かないってわかると、このバカ男、今度は大声で怒鳴り始めたよ。

「畠山の親父はなぁ、俺にあの縄張りくれるって約束したんだよ、だからあの辺は俺の縄張りなんだよ、おまえの店も角のキャバクラもみんな俺のシマウチなんだよ、こらぁ!離せよ!」

「縄張り?あんた組を破門になってんでしょ?縄張りも糞もないでしょ堅気のくせに」

その言葉に男が更に暴れだした。
足をバタバタとさせるから、ベッドの下の我が輩ん所にも色んな物が飛んで来た。

「ふざけんなー!おまえみたいなバーテンダーに言われる筋合いねぇーぞゴラァ!離せ!離せよ糞ガキ!」

「糞ガキだと?シャブボケが何言ってんだよコラぁ!」

店長の重いパンチが男の後頭部にゴン!と入った。
我が輩はそのまま首を絞めて殺してしまえ!とワンワン吠えてやる。

「あんたはどれだけ畠山の組長に迷惑掛ければ気が済むんだよ、あん? あんたが店から盗んだ200万だって畠山の組長が代わりに払ってくれたんだぜ、わかってんのかよアンタは!」

店長はそう言いながらゴッ!ゴッ!と後頭部ばかりを狙い撃ちした。

そのうちタラーッ……と鼻血を垂らし始めた男がグッタリすると、ミキちゃんが「店長!もうやめてー!のぶ君が死んじゃうー!」と店長に抱きついた。

なんで止めるんだよミキちゃん、このまま殴らせときゃアイツはそのまま逝っちゃうのに……

「ミキちゃん。島田さんや金崎さんから店に電話があったよ。ミキちゃんの事で変な男から脅迫されてるってね……。このままこいつと付き合ってると、ミキちゃんお店にいられなくなっちゃうよ?それでもいいの?」

店長はもう一発ゴッ!と殴った。

「やめて!わかったからもうやめて!のぶ君が死んじゃうよぅ!」

ミキちゃんはそう叫びながら店長の腕に噛み付いた。

「痛っ!」と店長が男の頭から手を離すと、男はまるで人形のようにタラン……と床に沈んで行った。

「ちっ!……てめぇもシャブやってんじゃねぇのか?」
店長は咬まれた腕を擦りながらミキちゃんを睨んだ。

「もう帰ってよ店長!もう私達の事は放っといてよ!」
ミキちゃんはそう叫ぶと、床にベタっと倒れている男の背中に抱きつき「あーん!……」と大声を出して泣き始めた。

店長が呆れた顔をして立ち上がる。
(おい店長!ヤツはゾンビみてぇなオトコだぜ!まだ帰らねぇでくれよ!)
我が輩はそう吠えるが、店長は「その顔の腫れが治まったら店に出て来いよ。おまえにはまだ100万の前借りが残ってんだ、忘れるんじゃねぇぞ!」とミキちゃんに捨て台詞を残し、部屋を出て行っていってしまった・・・・

しかし、どーしてこうもミキちゃんはここまでされてもこの男を庇うのかね……我が輩はわかんねぇよ、ったく・・・。

ここでこいつと別れておけば、あんな悲惨な事件は起きなかったのに…………

(最終話に続く)

          目次  次へ


 ランキングに参加しております。このブログが面白いと思われましたら、何卒、応援の一票をお願いします。
 FC2バナー1 人気ブログバナー にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ

破滅型恋愛小説

アクセスランキング
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。