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田舎の通学路

2012/01/04 Wed 02:20

田舎の
 家の前にある急な坂道を、僕と竹本君は運動靴をパタパタと鳴らしながら下りて行った。
 その坂道を下りて角を曲る瞬間、僕はソッと振り向いた。薄く雪が積もった坂道に、僕と竹本君の足跡がくっきりと残っていた。
 僕はそんな足跡を見つめながら下腹部に重い痛みを感じた。しかし急な坂道を見上げながら、今からこの坂を引き返すのは無理だよ、と諦めると、角を曲った竹本君を追って足を速めたのだった。

 僕がソレになんとなく気付いたのは、既にズームイン朝の『朝のポエム』が始まった時だった。
 お母さんはいつも『朝のポエム』の曲が聞こえると僕を急かせた。だから僕はいつもこの淋しげなテーマ曲と共に家を出て行くのだった。
 しかしその日の僕は、玄関先でふと足を止めると、(このままだと、途中でウンコしたくなるかも知れない……)と躊躇した。
 そんな僕を見てお母さんが「早くしなさい!」と台所から叫んだ。
「でも母さん、ウンコが……」と僕が眉を顰めた瞬間、まるでトドメを刺すかのように玄関のドアの向こう側から「飯島くーん!」という竹本君の声が聞こえて来たのだった。

 田舎の通学路は途方もなく長かった。
 どれくらいの距離があるのか測った事はないが、子供が普通に歩いて優に四十分は掛かった。しかもその道は、延々と続く国道沿いの歩道だった。辺りには民家も少なく、あるのはドライブインの錆びた看板と、そして、この村で唯一の観光地『天神峡の滝』の大型看板が、『この先右折』や『この先5キロ』といかさま臭く誘導しているだけだった。
 そんな貪よりした冬空の国道沿いを、まるで四国八十八ヶ所を巡礼するお遍路さんの如く、僕と竹本君は学校を目指して黙々と歩いた。
 僕の前を歩く竹本君のランドセルに、八幡様の御守りがぶら下がっており、その鈴がチリチリと聞こえる度に僕の腸は刺激され、強烈な糞意を覚えた。それはまるで『パブロフの犬』のようだった。

 途中、道路沿いにある『チェーン着脱場』の隅に、トラックの運転手が捨てて行ったと思われるエロ本が、無残に転がっているのが見えた。
 竹本君はそんな無残なエロ本を一瞥すると、ソッと僕を見て立ち止まった。
「どうするね?」
 竹本君は全体的に『チューリップの球根』に似ていた。そんな球根顔の竹本君が、真剣な面持ちでエロ本の前で立ち止まりながら僕にポツリとそう呟いた。
 しかし僕はその時、強烈にウンコがしたかった。その糞意は限界を越え、この寒空の下にも関わらず額に脂汗を掻いている始末なのだ。
 ここで道草を食っている暇はない。そう思った僕は、そのエロ本を見たいのは山々だったが、しかし「早く行こっ」と歩き出したのだった。

「僕はあんなもの全然見たくないよ、汚らしい。飯島君がいつも見ようって言うから、だから僕は……」

 自尊心を傷つけられた竹本君は、そう必死にブツブツ言いながら歩いていた。
 しかし僕は、今のこの状況を竹本君に素直に告白する事はできなかった。こんな重大な事を下手に告白しようものなら、きっと竹本君は僕の事を『ウンコマン』とからかい、おまけに雪玉を投げ兼ねなかった。そしてクラスの皆に僕が今ウンコをしたい事実を言いふらすに決まっていた。
 竹本君と言うのはそんなヤツなのだ。
 だから僕は真実を伝える事が出来ないまま、ただひたすら黙々と進むしかなかったのだった。

 しかし、二十分ほど黙々と歩いた頃、ふいに足を止めた竹本君が僕に振り返った。
 竹本君のその顔はまさに青ネギの如く青ざめ、本来のチューリップ球根顔が、まるで『ネギ坊主』のようになっていた。
「どうしたの?」と僕が聞くと、竹本君は唇を震わせながら「ちょっと待っててくれるかな」と、蚊の鳴くような声で呟いた。
「どうして?」
 一刻を争っていた僕は、怪訝な表情で竹本君の顔を覗き込んだ。
「今朝、冷たい牛乳を飲んでしまったんだ……」
 竹本君はそう激しく後悔しながら項垂れ、そして道路沿いにある下林さんの家をチラッと横目で見た。
「もしかしてウンコしたいの?」
 僕が驚いてそう聞くと、竹本君は弱々しい声で「誰にも言わないで」と眉を八の字にさせた。
 竹本君は奇妙な歩き方をしながら、そのまま下林さんの家の門を潜った。僕は(どうしよう)と迷いながらも竹本君の後に続く。
 いっその事、竹本君に便乗して僕も下林さんの家のトイレを借りようかと思った。そうすればこの事実は僕と竹本君の共通の秘密と言う事になり、今後、それが誰にも知られる恐れはないのだ。
(よし、そうしよう)
 そう決心した僕は、それを竹本君に伝えようと少し早歩きをしながら竹本君の横に並んだ。が、しかし、それを伝えようとした瞬間、既に竹本君は下林さんの玄関に向かって悲痛な声で叫んでいた。
「お願いします!」
 その叫び声は、まさに断末魔の叫び声のようだった。
 何事かと慌てて玄関に出て来た下林のおばさんは、真っ青な顔をした僕達を見て「な、なんじゃ!」と戦慄した。
「お、おばちゃん……トイレを貸して……」
 竹本君はそう呟きながら玄関に崩れ落ち、まるで傷を負った落ち武者のように不気味な唸りを上げた。
「ウンコけ!」
 下林のおばちゃんはキッと眉を顰めながら叫んだ。
「お母さんが冷たい牛乳を飲ませるから……」
 竹本君は唇を震わせながら必死に訳を説明し、下林のおばちゃんの顔を見上げた。
 すると下林のおばちゃんは、「ウチは公衆便所じゃね!」と苦々しくそう呟きながら、連続して「チッ、チッ」と舌打ちをした。しかし、あまりにも竹本君が大袈裟に唸るせいか、遂に諦めたおばちゃんは、廊下の奥をチラリと見つめながら「早よしれや」とネギ坊主のような竹本君に吐き捨てたのだった。

 竹本君がトイレに駆け込んで行くと、未だ「チッ、チッ」と舌打ちするおばちゃんは僕を見つめ、「よくもヌケヌケと人様の家でウンコ捻るもんだわ」と呆れ変えるように呟いた。
 そんな僕はその場で項垂れるしか方法はなかった。この状況で、まさか「僕もトイレを……」と言えるわけがなかったのだ。
「赤の他人にウンコされる人の気持ちが、あんたたちにはわからんのけ?」
 下林のおばさんは、玄関の上からそう僕を追い詰めて行く。そのうちそこに作業服を着たおじさんが「どうしたんじゃ」と出て来た。おじさんは朝ご飯の最中なのか、先が黒ずんだ割り箸を握りしめたままだった。
「常識の知らん子よ。朝っぱらからウンコしたいから言うて、便所貸せ言うてきよったわ」
 おばさんがそういやらしい笑みを浮かべると、おじさんは「なんやと!」と、なぜか二度足踏みしながら大きな声で叫び、僕は益々「僕もトイレを……」と言えない状況に陥った。
「なんで朝ウンコして来んのや」
 おじさんは、まるで『朝マック』のような言い方で僕にそう聞いた。
 するとおばさんが「この子は違うんよ。トイレ貸してくれ言うて来た子は、今、ブリブリやっておらすわ」と、忌々しくトイレを見つめながら呟いた。
「じゃあ、おめ、貸したんけ?」
 おじさんはまたしても二度足踏みしながらトイレに振り向いた。
「だってしょうがないでしょうが、真っ青な顔してから今にも死にそうな顔で『ウンコさせてくれぇ』言うんやもん、トイレ貸さなここでやらかしよるであの子……」
 おばさんが呆れるようにそう呟くと、おじさんは憤りを感じながらも僕を見つめ、「おまえらなぁ、赤の他人にウンコされる家のモンの気持ちを考えた事あるのか」と、割り箸を握る拳をブルっと震わせた。
 するといきなりトイレのドアがカチャッと開いた。
 そこから顔を出した竹本君は、元のチューリップ球根顔に戻り、清々しい表情でニヤリと笑った。
「おまえか!人の家でウンコさらす常識知らずは!」
 おじさんがそう叫んだ瞬間、竹本君は廊下をバタバタと走り出し、急いで玄関の靴を履くと、「ありがとうございました!」と叫びながら玄関を飛び出した。慌てて走り出した僕達の背後から、おじさんとおばさんがハモる「バカヤロメ!」という叫び声が響き、玄関先の駄犬がキチガイのように吠え出したのだった。

 清々しい表情で歩く竹本君は、「あのウチのトイレはボットンだったから、下からスースーと冷たい風が吹いて来たよ」などと余裕の笑みを浮かべていた。
 が、しかし、彼の問題は解決しても、僕の問題は続行中である。僕は額にダラダラと脂汗を掻きながら、ジッと一点を見つめたままひたすら黙々と歩き続けた。そんな僕に「ウンコした事、誰にも内緒だよ」と恥じらう竹本君は相変わらず八幡様の御守りの鈴をチリチリと鳴らしていた。
 そのチリチリという鈴の音が、僕の頭の中で幻想的にエコーが掛かり、まるでクリスマスのサンタの鈴の音のように聞こえて来た。
 もう限界だった。今にも土の中からモグラがモコッと顔を出すように、僕の肛門からもウンコがモコッと飛び出しそうだった。
 僕は「ねぇ」と竹本君を呼び止めた。ここで告白しても、先にウンコをしている竹本君だから、それを誰にも言いふらさないだろうと僕は思ったのだ。
「どうしたの?」
 足を止めて振り返る竹本君に、僕はボソッと告白した。
「僕もウンコがしたくなって来たよ……」
 竹本君は一瞬眉を顰めながらも「学校まで我慢できないの?」と聞いて来た。
「無理。もう出そう……」
 僕は中腰になりながら、歩道のカードレールに両手を付いた。
「ど、どうするの?……」
 緊迫した僕の様子に、竹本君は少し狼狽えた。が、しかし、僕が「そこでする……」と歩道の脇の雑木林を指差した時、竹本君の顔に微かな笑みが浮かんだ。
「本当に?」
 竹本君は唇をヒクヒクと震わせながら僕の顔を覗き込んだ。僕はそんな竹本君の微かな笑みに不安を感じたが、しかしもう限界だった。
 竹本君を押しのけ、そのまま小さな側溝を飛び越えて雑木林の中へ飛び込んだ。バサガサと湿った枯れ木を踏みしめながら奥へと進むが、しかしその奥は崖になっており、崖のすぐ下を『天神峡の滝』から流れてくる激流が轟々と飛沫を上げていた。
 崖を降りられない、と思った僕は迷わずズボンを下ろした。
 その瞬間、歩道から見ていた竹本君が「キャハッ!」と笑った。
 僕は竹本君のその笑い声に背筋が凍ったが、しかし今更どうにもならない。
 しゃがむと同時に、僕を散々苦しめたウンコは、ピチピチと音を立てながらニョキニョキニョキっと地面に伸びた。
「キャハハハハ!」という竹本君の笑い声が湿った雑木林に響いた。
「笑うでない!」
 そう叫んだ瞬間、長いウンコはプツリと切れ、湿った枯れ葉の上にドサッと落ちた。しゃがんだ尻の下では、まるで『井村屋の肉まん』を保温ケースから取り出した時のような柔らかい湯気がモワッと沸き上がっていた。
 巨大なバナナ型ウンコが無事捻り出されたが、しかし、悪夢はそれだけでは終わらなかった。
 残糞感が下腹部から一向に消える気配はなく、さもそのバナナ型ウンコが肛門の蓋をしていたかの如く、なにやら腸の奥で水状の物体がグルグルと鳴り出した。
 蓋が抜けた肛門は一触即発の気配を見せながら、まるで餌を欲しがる錦鯉の口のように、ヒクッ、ヒクッ、と二度痙攣した。
 僕は必死にソレを堪えながら、ソッと背後の竹本君に振り返る。
 竹本君は真剣な眼差しで僕の尻を見つめていた。僕と目が合った瞬間、「大丈夫よ、僕が見張っててやるから!」と大きな声で叫んだ。
「いいから先に行っててよ!」
 僕は肛門をヒクヒクさせたまま半泣きの声でそう叫んだ。すると大きな声を出した勢いで、ほんの少しだけピチッと水状のウンコが洩れた。
「大丈夫よ!待っててあげるから早くしなよ!」
 そう叫ぶ竹本君の声は明らかに笑っていた。僕はこれ以上竹本君に見られたらマズいと思いながらも、しかし肛門はソレ以上は耐え切れなかった。
 シュパッ! という音と共に茶色い下痢が噴射した。それを皮切りに、シュパシュパシュパッ! っと大量の下痢が一気に噴き出した。
 重苦しい糞尿感が一気に下腹部から消え失せ、最高の安堵感が僕を包み込んだ。が、しかし、僕の背後では相変わらず竹本君の笑い声が響いていた。僕は他人に最も見られたくないシーンを、竹本君に一部始終目撃されていたのだった……。

 その日の学校は、何事も無く普通だった。ただ、まともに糞を拭き取っていない肛門がヒリヒリと痒かっただけで、他は特に変わった様子は無かった。
 が、しかし、翌日からは違っていた。
 クラスの皆は僕を見る度にニヤニヤと怪しい笑みを浮かべ、挙げ句の果てには担任の先生から「おまえは犬か」と嫌味を言われた。
 そう、案の定、竹本君は僕が野グソをした事を言いふらしていたのだ。
 僕は反論する事も出来ないままクラスの皆の白い目に耐えた。そしてもう二度と竹本君とは一緒に学校へは行かない事に決めたのだった。

 いよいよ田舎の冬が本番を迎えた。村は真っ白な雪に埋め尽くされ、村全体が廃村と化したかのようにシーンと静まり返っていた。
 登下校はスクールバスになった。白一色の猛吹雪の中を、黄色いスクールバスがタイヤのチェーンをジャリジャリと鳴らしながら進んで行く。
 そんなバスの中でも僕は竹本君とは一緒に座らなかった。竹本君も僕が避けている事を知っているらしく、それを忌々しく思ったのか、曇ったバスの窓に、指で『野グソ』と書いては皆を笑わせていた。

 そんな重苦しい冬がやっと過ぎ去ってくれた。
 田舎の春というのは、今までの重苦しい雪景色が一掃されると同時に、人生さえもリセットされたように気分が軽やかになる。
 僕はいつものようにズームイン朝の『朝のポエム』の寂しげな曲と共に家を飛び出した。パッと明るい太陽の光りが降り注ぎ、鳥のさえずりと共に甘い草木の香りが僕を包み込んだ。
 いつもならそこで待っている竹本君に「おはよう!」とランドセルを鳴らしながら駆け寄るのだが、そこに竹本君の姿はない。
 僕は一人で、ヒラヒラと舞い飛ぶ黄色い蝶々と共に歩き出した。

 雪解けの水が側溝の中でコポコポと音を鳴らして渦巻いていた。僕は道路脇にある泥だらけの雪の残骸を蹴飛ばしながら、国道沿いの歩道を黙々と進んだ。
 すると、しばらく行くと竹本君がポツンと立っているのが見えた。
 竹本君は僕を見つけるなり、遠くから「早く早く」と僕に手を振っていた。
 なんだろう、と不思議に思った僕は取りあえず小走りに走り出した。
 竹本君が立っていたのは、そう、僕が野グソをした雑木林の前だった。それに気付いた僕は、また今年もこの件をネタに徹底的に虐められるのかと思うとウンザリとした。
「飯島君、見てみろよ、凄い事になってるよ!」
 竹本君は、急に走る速度を弱めてはダラダラと歩き出した僕に向かって必死に手招きしながらそう叫ぶと、子鹿のようにジャンプしながら雑木林の中へと駆け込んで行った。
(もういいよ……)と思いながらも、しかし竹本君のその尋常ではない様子が気になった僕は、竹本君の後に付いて雑木林の中へと飛び込んだ。
「これ見て!」
 竹本君は雪解け水で湿った地面を指差しながら僕に振り向いた。
 僕がその指の先をソッと覗き込むと、そこには運動会のリレーで使うバトンほどの大きさのウンコがボテッと横たわっていた。
「凄いだろ、キミのウンコはあの大雪の中で冷凍されていたんだ!」
 竹本君は目を爛々と輝かせながら僕に向かってそう微笑んだ。そして竹本君は「匂いも残ってるのかなぁ」と言いながら、新緑の雑草が生えた地面に両手を付き、まるで犬がソレをするように僕のウンコに鼻を近付けた。
「もうよせよ」
 僕は、またどうせソレをネタにしてはクラスで僕を笑い者にするんだろうと思いながら、竹本君のランドセルを引っ張った。
 するといきなり竹本君が「ちょっと待って!」と叫んだ。
 竹本君は僕のウンコをジッと凝視しながら何かを発見したようだった。
「見てみろ! ウンコの裏側が緑色に変色してるぞ!」
 竹本君は古代遺跡を発見した考古学者のように慌てふためきながらそう叫ぶと、小枝を拾い上げてはソレで僕のウンコをひっくり返した。
 まるで海岸線に打ち上げられた魚の死骸のようにウンコはゴロンっと転がると、緑茶を擦り付けたかのように深緑に染まったウンコの腹が明るい太陽に照らされた。
「雑草の上にしたから、草の緑が着色されたんだな……」
 竹本君は納得しながらそう呟くと、僕を横目でソッと見ながら「緑のウンコだ」と笑った。
 そして竹本君は、いきなり緑のウンコの上に枯れ葉をバサバサと被せ始めた。「何をしてるの?」と不思議そうに僕が聞くと、「このまま保管して観察してみようよ。何か凄い発見が出来るかも知れないし」と、緑のウンコを枯れ葉の中に隠した。
「誰かが悪戯するといけないから、誰にも内緒だよ」
 竹本君は手の平の土をパタパタと払いながらそう言った。
 それはこっちのセリフだとばかりに、僕は「本当に誰にも言わないかい?」と、ソッと竹本君の顔を覗き込むと、竹本君は「約束するよ」と男らしく微笑み、そのままガードレールを飛び越えて歩道に出たのだった。
 そんな竹本君に「待ってよ!」と叫びながら、僕もガードレールを飛び越えた。
 なんだかとっても嬉しかった。これで三学期は『野グソ』というあだ名から解放されるだろうと安心しながら、僕は竹本君のランドセルでチリチリと鳴る鈴に微笑んでは、彼の後を追いかけたのだった。


 が、しかし……
 確かに、その日から、僕は『野グソ』というあだ名から解放された。解放されたには解放されたのだが……

 ある時、体育の授業が終わって教室に戻ると、黒板に大きく『草食動物』と殴り書きされ、その下には緑のチョークで書かれたウンコのイラストが添えられていた。そして、チョークで書かれた矢印が、黒板の隅に書いてあった日直の僕の名前を指していた。
 だから僕のあだ名はその日から、草食恐竜の『トリケラトプス』と変わった。
 竹本君といういうヤツはそんなヤツなのだ。

   (田舎の通学路・完)



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