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餓鬼8



「がっぽり稼ぐって簡単に言うけど何すんだよ!銀行強盗なんか俺たちにできるわけねぇだろ!」
静まり返ったボウリング場のアジトに哲雄の声が谺した。
「だから取りあえずこの金で東京に逃げようぜ、な、今捕まったら元も子も無いよ!」
哲雄は五七万が入った味付け海苔の缶をコン! とテーブルの上に置きながら、正面に座っている正治に詰め寄った。
正治が何かを言おうとした瞬間、いきなり哲雄が正治の背後を見ながらギョッとした。
慌てて振り向く正治もまた、目玉をひん剥きながらギョッとした。
アジトの入口には岡本ミカがニヤニヤと笑いながら立っていた。

「な、な、なんだおめぇ!」
そう叫ぶ正治に、岡本ミカは「本当、あんた達ってバカよね……」と呆れた顔をしながらスタスタとアジトに入って来た。
「勝手に入ってくんじゃねぇよ!」と正治が叫ぶと、ミカは首を小さく傾けながら「ぜーんぶミツオから聞いちゃったんだけど、なにか?」と微笑んだ。

正治と哲雄はゾッとしながら互いに見つめ合った。
ガラスの破片を踏みしめながら歩くミカは、照明機のスイッチをカチカチと押しながら、「小学生だけでどーやって東京で暮らしてくって言うのよ……本当バカねぇ……」と呟くと、そこに広げてあったエロ本のグラビアを覗き込んでは「ちっぱい」とせせら笑った。
「ごめん……」
ミツオが鼻を啜りながら、ドアの影からヌッと顔を出した。
「てめぇ裏切ったな!」
正治がそう叫びながらテーブルの上のエアガンを鷲掴みにした。
「あわわっ!」と頭を抱えてしゃがみ込むミツオの前に、素早くミカが立ち塞がった。
「違うわよ。ミツオは裏切ったんじゃないわ。ミカのパンツが見たかっただけよ」
ミカは大きな目をキラリと輝かせながら正治と哲雄を見下ろした。

「パンツ?」と顔を歪めながら正治はエアガンを握り直した。
「そっ。ミカが学校のベンチに座ってたらね、ミツオがミカのスカートの中をジロジロジロジロ見てたの。だからミカが『見たいの?』って聞いたら『うん』って言ったから見せてあげたの。そしたらあんた達の秘密を全部教えてくれたの。ただそれだけ。だからミツオは全然あんた達を裏切ったりしてないわ」
ミカはツインテールに縛った髪をウサギの耳のようにピコピコさせながら振り返ると、そこに踞っていたミツオに「ねー」と首を傾けた。
「てめぇ、ミツオがバカだからって引っ掛けたな!」
「引っ掛けてなんかないわよ、だってミカ、あんた達が佐古多橋の男を襲ったって事、最初から知ってたもん」
動揺する正治と哲雄を見て、ミカは唇の端を斜めに歪めながらニヤリと笑った。

「どうしてだよ……」
哲雄がゆっくりと立ち上がりながらミカを睨んだ。
「どうしてって、何が?」
ミカは首を傾げながら笑ったまま、照明ブースの椅子にゆっくりと腰掛けた。
「どうして俺達が犯人だって知ってたんだよ……」
ミカは上目遣いに哲雄を見上げると、「うふふっ」と意味ありげに笑いながら足を組んだ。白いヒラヒラのミニスカートの中から黒いニーソックスに包まれた長い脚が伸びていた。
そんなミカが小学生には思えないくらいに色っぽく、ミカの大きな目に見つめられた哲雄はおもわずゴクリと唾を飲んだ。
「ウチのママね、松木組の幹部の愛人なの。その人、繁本さんって言うんだけどね、事件があった次の日、繁本さんがウチに来てママに話してるの聞いちゃったの……」
ミカは勿体ぶるように言葉を止めると、ゆっくりと足を組み替えながら正治と哲雄を交互に見渡し、「犯人は小学生だって事をね」と小さく呟いた。

正治と哲雄の顔が一瞬にして硬直した。
警察も怖いが、松木組はもっと怖いのだ。
動揺を隠しきれない正治が持っていたエアガンを床に落とした。
カチャっとプラスチックの音が響くと同時に、正治はテーブルの上に置いてあったもうひとつの拳銃を握りしめながら叫んだ。
「てめぇ、俺達の事をその松木組の奴に言うつもりだな!」
叫ぶと同時に、拳銃をミカに向けた。
「う〜ん……それも楽しいかもね」
ミカが健康的な唇をニヤリと歪ませながら笑う。
「てめぇ……」
正治の指がトリガーでブルブルと震えた。
「ふん。なによそんなオモチャ。バカみたい」
ミカがケラケラと笑い飛ばすと、前に歩み出た哲雄がブルブルと震える正治の腕をゆっくりと下ろさせながら、「オモチャじゃねぇよ」と呟いた。
「うそっ?…ホント?…」
あまりにも真剣な表情で呟く哲雄を見て、ミカが慌てた。
「本当かどうか撃ってやろうか!」
正治がそう叫びながらミカに再び拳銃を向けると、驚いたミカが両手で顔を塞ぎながら、「やだやだやだ!」と足をバタバタとさせた。
すると、すかさずドアの影から飛び出して来たミツオが、ミカに向かって「パンツ脱げ!」と叫んだのだった。

パンッ! と哲雄に頭を叩かれたミツオがスゴスゴと引き下がると、哲雄は仕切り直すように、「……っていうか」と呟きながらソファーに腰を下ろした。
「おまえ、ここに何しに来たんだよ……わざわざミツオにパンツまで見せて、それを俺達に伝えようとここまで来たのか?……」
哲雄の言葉に冷静さを取り戻したミカは、座っていた事務椅子をギギギッと回転させながら哲雄に背を向けた。そんなミカの背中は白ネギのように細く、髪をツインテールに縛った頭には白い頭皮がワレメのように浮かんでいた。
ミカはボウリング場の薄暗いホールを見つめながら、ぶっ壊れた照明機のスイッチをカチカチと押した。そして、鼻歌混じりに、「ミカも仲間に入れてよ…」と呟いたのだった。

一呼吸置いて、正治が「アホか」と鼻で笑った。
素早く事務椅子をクルッと回転させたミカは、哲雄に向かって大きな目をキッと絞りながら、「ミカ、一千万円盗めるとこ知ってるよ」と、ツンと尖った鼻を上に向けた。
「ヨタ飛ばしてんじゃねぇよブス」と、正治が呆れながら煙草に火を付けた。
「ヨタなんかじゃないよ、ホントだよ」
ミカは唇を尖らせながら正治にそう吐き捨てると、突然哲雄の目をを潤んだ瞳でジッと見つめながら、「あんたなら、ミカの事、信じてくれるよね」と、甘えた口調でポツリと呟いた。

瞬間、哲雄の胸にポッと熱いモノが膨らんだ。ミカの細くくびれた腰と丸く突き出た尻、そしてカモシカのように細く長い脚と、プクッと膨らんだ二つのおっぱい。それらが哲雄の頭の中で霧がかかったようにモヤモヤと浮かび上がり、不意に、以前鷲掴みしたおっぱいの柔らかい感触が手の平に甦って来た。
カッと顔を火照らせながらも、慌てて視線を落とした哲雄に、ミカがここぞとばかりに呟いた。

「ミカを仲間に入れてくれるなら、一千万円が盗めるとこを教えてあげるわ。でも、仲間に入れないって言うのなら……あんた達の事、松木組の繁本さんに告げ口するわよ……」

潤んだ瞳を、突然、小悪魔の瞳に豹変させたミカは、俯く哲雄の膝をスニーカーの先でツンツンと突きながら笑った。
興奮した正治が「てめぇ、マジに殺すぞ!」と拳銃を向けた。その後でミツオが「パンツ脱げって!」と叫んだ。
そんな二人をあざけ笑いながら再びクルッと背を向けたミカは、「さぁ、どうする哲雄君……」っと怪しく微笑みながら、意味もなくカチカチとスイッチを押したのだった。

(つづく)

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