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我が輩は野良犬である3

2012/01/07 Sat 13:04


       4

ポカポカの天気ん中をミキちゃんとふたりっきりで歌舞伎町ランデブー。

昼の歌舞伎町ってのはどーしてこんなに汚いの?っつー感じだね。
特にその日は天気が良かったからさ、汚い部分が良く目立ってたんだろうけど、それにしても汚ねぇ街だよ歌舞伎町は。

まず、道路。
ピンクチラシとか競馬新聞がそこらじゅうに捨ててあんだけど、ま、それは別に許せる。
堪んないのが「タン」ね。
ほら、人間がよく「カーッ・・・ぺっ!」って吐いてるアレよアレ。
あのタンがね、道路のそこら中に吐かれててクセぇクセぇ。
昨日の夜に吐いたやつなんかが、太陽の光でカリカリに乾かされちゃっててさ、白くなって道路にへばり付いてるの。

でもここが犬野郎の悲しい性だよな、そんな白く乾いたカリカリタンなんかを見つけると、ついついニオイを嗅がなくちゃいられねぇんだよな。そんで嗅いじゃってから「うわっ!クッサ!」なんて慌てて「フン!」なんて息吐き出してんだけど、遅いっつーの。

あとこの街は、いったい夜な夜な何が繰り広げられてんだか知んねえけど、とにかくあっちこっちに、生理用品の汚物とかパンティーとか精液溜ったコンドームなんかが転がってんだよね。路上でセックスカーニバルでもしてんのか?っつーくらい下半身系のブツがそこらじゅうに転がってるよ。

バッティングセンターの駐車場の入口に丸まったナプキンが転がってたから、よせばいいのについつい我が輩はニオイをクンクンやっちゃってね、んで、「なんだこのニオイ?」ってな感じでその丸まった中身をよく見たらウンコの塊が入ってんだもん、ま、ウンコのニオイは嫌いじゃネェけど、人間のウンコは変なニオイがするからさぁ、気分悪くなっちゃって小便ひっかけてやったよ。

そんな感じでミキちゃんと歌舞伎町をトコトコ歩いて、コマの裏の交番を通り過ぎて左に曲がると見覚えのある雑居ビルが見えて来たよ。

我が輩も何度かこのビルの前までは連れてきてもらった事あるんだ、うん、チョット前にミキちゃんのヒモみたいにくっ付いてた男がいたんだけど、そいつがミキちゃんを店まで迎えに行くとき、よく車で連れて来てもらった事がある。

その男がまたアホな奴でね、ミキちゃんの事を好きで好きで堪んなかったらしいんだけど、でもそいつには女房と子供がいるんだよ。
一時は離婚する!っとか言ってミキちゃんのマンションに住んでたんだけどね、もーとにかく仕事をしない野郎でさぁそいつは、ミキちゃんの財布ばっかりあてにして競馬ばっかりやってんだよ。

ミキちゃんは優しいから「はいっ」なんて言ってお小遣いあげたりするでしょ、そしたらそのアホその日のうちに全部競馬でスられちゃうんだよ。
それでもミキちゃんは菩薩みたいに優しいオンナだからさ「今度は勝ってね」なんて言ってまた小遣いやるの。

そのうち、本人も悪いと思って来たんじゃないかな、それほど根っからの悪人でもなさそうだったし、ある時、ふらっと出て行ったよ。
それっきりそいつは消えちゃったんだけど、ま、自分よりもひとまわりも違う娘から金貰って競馬やるようになったらおしまいだね、うん。

で、いよいよ我が輩も初めてのキャバクラ体験って事になるんだけど、ミキちゃんがエレベーターん中で言うのよ我が輩に、「店長は怒ると怖いから静かにしてるのよ」って。
「そいつは口臭くない?」ってワンって吠えたら、ミキちゃん、我が輩が素直に返事をしたんだと勘違いして「いい子だね」ってチュッてしてくれた。

ドアを開けると一気に猛烈なニオイが我が輩を襲って来たよ。
なんだいあのニオイは。
オンナの香水、床にこぼしたビール、煙草、おっさんの整髪料、とありとあらゆるニオイがミックスされてムアっと来たよ。

みんなあのニオイによく我慢できるね……高い金払ってあんなニオイを嗅がされてんだもん、キャバ通いの男っつーのはなんか悲しいもんだね。

で、我が輩がフロアに行くととたんに「キャー!かわいいー!」って向こうからドタドタと姉ちゃん達が走って来たよ、Hなニオイをプンプンとさせた姉ちゃん達が。

「抱っこしていいー」って騒いでっから、我が輩も「抱っこしていいよー」ってな具合でキャンキャンと吠えてやるんだ。

あっちこっちに引きずり回されて全員のおっぱいの感触を味わった我が輩だけど、やっぱりミキちゃんの匂いが一番だなってこの時思ったね。

いや、みんな若いコばっかりだしそれなりにいい匂いはしてんだよ、してんだけどなんかどこかミキちゃんとは違うんだよね。

特におっぱいの大きなアズミっていう子は、凄い匂いがしてた。
多分ね、あの子はSMのMなんかやってんじゃないのかな・・・おっぱいの辺りにロウソクの匂いがプンプンしてて、首筋なんて精液の香りがしてたよ。
多分、昨日の匂いだねアレは。

あとミナっていう小顔の可愛いコがいたんだけど、あいつは間違いなく親父と付き合ってるね。しかもかなり高齢の。
あのコの首筋からおっさん独特の加齢臭がプ~ンと来たから「あれ?」と思った我が輩は、ミナがしゃがんだ時にジーパンのアソコをクンクンやってみたのよ、そしたらソコからおっさんの唾液の匂いがプンプンと漂ってきたからさ、あ、こりゃあ間違いネェなって確信したんだよ。

そして極めつけが満里奈っつー女の子。
ミキちゃんに匹敵するくらいのとんでもなくカワイイ子なんだけど、でもね、彼女、シャブやってるね。
シャブの匂いってのは独特でさぁ、我が輩たち犬なんかはすぐにわかるんだよね。
特にシャブの現物よりも、体内から滲み出て来るシャブの匂いってのはなんか危険な香りがすんだよね、どう説明したらいいのかな、なんかこう、ヤバいフェロモンっつーのかな、動物の世界だったら「威嚇」しているような、ま、いわゆるスカンクだ。
そんな小便臭い危険な香りが満里奈の毛穴からプンプンしてたね。
ありゃ、ついさっき打ったばっかのホヤホヤなんじゃねぇかな・・・

ま、キャバ嬢にも色々いるから一概にはアレなんだけど、見た目はどれだけ良くてもとんでもねぇ奴が沢山いるからさ、みんなもあんまり深入りしねぇほうがいいと思うよ、うん。

ってなわけで、我が輩はフロアにひとり残されて、全員が裏の更衣室に行ってしまったわけなんだけど、我が輩、さっきからこの店がなーんかイヤーな感じがしてんだよね。

うん。アレがいる気配がすんだよ、この店は。

我が輩ら犬はそっち方面のアンテナはなかなか利くからね、ま、猫ほどでもねぇがそれに近いくらいのアンテナは持ってる。
猫はそっちに関しては異常だからね、うん、あいつらは霊界の使者じゃねぇのかっつーくらいの素晴らしい霊的アンテナ持ってるよ。
その点犬は霊界よりも現世のアンテナの方が強いからね、だから番犬とかってできるんだけど、でも犬でもそこそこのアンテナは持ってるからね、だからなんとなくわかるのよ、この店のアレが。

我が輩、ヤダな・・・なんて思いながらソファーの隅に隠れて丸まってたんだけど、しばらくすると出て来たよやっぱりアレが。

そいつはサラリーマンっぽい男でさぁ、ヨレヨレのスーツ着てた。
多分、自殺だろうね、ほとんど外傷はなかったから。でも、やたらとスボンがベタベタに濡れてんの。
首吊りでもして小便洩らしたんだと思う。

そいつはひとつのソファーをジッと見つめたまま立ってた。
恐らく、生前、この店のそのソファーに思い出があるんじゃねぇのかな・・・
とっても淋しそうに見つめてたよ。

そいつが現れると、もう次々に出てきやがった。
アレ、人間がわいわいとやってるとどこかに消えちゃうんだけど、誰もいなくなるとどこからともなくまた出て来るんだよな。

今はこのフロアには誰もいないからチャンスだと思って出て来たんだろうね、淋しいヤツラだよこいつらも。

4、5人のアレがフロアを彷徨っていたよ。
みんなこの店に思い入れがあるんだろうな、淋しそうな顔して静かに店内を見つめているだけだった。

ただ、その後に出て来た奴はちょっと違った。
気が狂ったように怒ってんだよ、そいつ。
頭割れて脳味噌出てたからもしかしたら殺された奴かもしれねぇな。それか、酔っぱらって階段から落ちたか、うん。

で、そいつはいったい何に怒ってんのか知らネェけど、とにかくフロアん中を走り回ってさ、ソファなんかピョンピョンと飛び跳ねやがるもんだから、我が輩もついつい犬の本能が出ちまって、走り回るそいつをワンワンと吠えながら追い掛けてしまうわけよ、ホント犬って本能止められねぇからバカだよな。

そしたら奥から店長がヌッと出て来てさ、「おっ、どーしたんだ?遊んで欲しいのか?」なんてノン気な事をほざいてやがる。
んで、やっぱりこの店長も人間技とは思えねぇような口臭撒き散らしてるわけだけど、なんと、その例のアレ、店長がフロアに出てくるなり、今まで以上に怒り狂っちゃってさ、店長の隣りに立ってなにやらガミガミと叫んでるんだよ。何を怒ってるのかは残念ながら犬にはわかんねぇんだ、これは猫とカラスにしかわかんねえんだ。
猫はまだ聞こえるだけだけどカラスになると、あいつらは霊と会話するからね。
こないだも何を話してるかまではわかんなかったけど、マンションの下の公園で内臓飛び出したアレとカラスが楽しそうに雑談してるのを見たけど、あんまり気持ちのいいもんじゃねぇな、あれは、うん。

で、その頭クラッシュしたバケモノなんだけど、店長が我が輩を抱きかかえるとさ、今度は色んな物を投げつけて来てさ、ま、それは霊界の物だから実際には当たってないんだけどね、とにかくそいつは店長の頭ばっかり狙って物を投げつけ来るんだよ。
こんな時に写真を撮ったりすると心霊写真とかってできるんじゃないのかな。
ほら、よく心霊写真なんかで頭に包丁みたいな物が突き刺さってるような写真とかってあるじゃない、アレだよアレ。
こんな時に写真撮ると、きっとこの店長の頭には、今さっきあいつが投げた灰皿なんかが写っちまうんだと思うな、うん。

しばらくすると、奥からアズミがこっそりやって来た。ほら、さっき我が輩を抱いた、例のローソク臭いSMのMの子だよ。
そしたらその頭クラッシュの化け物がね、アズミがフロアにやって来たとたん、急に床にしゃがみ込んでワーワーと泣き出したんだよ。
そりゃあ豪快な泣き方だったよ、床の絨毯なんか掻きむしっちゃって、わーわーと涙流しながらアズミを睨んでたよ。

アズミは辺りをキョロキョロと気にしながら店長に近付くと、「今夜はどうするの?」って囁くように聞いた。
店長は我が輩を赤子のように「よしよし」なんて抱きながら、「行くよ」とポツリと返事した。
我が輩は「まさか、おまえが・・・」と店長の指をクンクンと嗅いでやると、やっぱり店長の指からローソクの匂いがプンプンしていた。

頭クラッシュ男がアズミに必死に掴み掛かりながら何かを叫んでたよ。
恐らく、この頭クラッシュ男は、アズミに貢ぐだけ貢いだ挙げ句、最後にゃ店長とアズミに殺されちゃったんじゃないのかなぁ……なんて思いながら、おもわず背筋がブルっと震えたね。

他にもそんなアレは店内をウヨウヨと彷徨ってたよ。
店長が出て来た事によって、みんな隅っこに行っちゃったけど、よくみたら壁中にズラーっと顔が並んでたよ。しかもみんな凄い形相で店長を睨んでたな。

こいつら、営業中もこうやってフロアをジッと見てんだろうなぁって思ったら、我が輩はミキちゃんの事が心配になってきちゃってさ、そしたら運悪くミキちゃんがフロアにやってくるじゃない、我が輩はミキちゃんに「こっちに来るな!」ってワンワンと吠えたんだけどね、ダメだよ人間は、その我が輩の鳴き声を喜んでいると勘違いしやがるんだもん……。

「おっ?やっぱりミキが来ると喜んでるよコイツ」
店長はそう言いながらローソク臭せぇ手で、我が輩を床に解放してくれた。
我が輩は「もう帰ろうぜ!ここは幽霊のデパートみてぇだぞ!」ってミキちゃんに吠えるんだけど、ミキちゃんは「静かにして」なんて言いながら我が輩に向かって「シィー……」なんてノンキに人差し指なんか立ててる。

そのうち、壁からスッと一人オンナが出て来た。
そいつはミキちゃんの後にフワフワと近寄ると、ミキちゃんの顔見ながらシクシクと泣いてんだよ。
ミキちゃんもなんとなくわかったのか、やたらと後ばっかり振り向いてる。

我が輩、そいつがミキちゃんに憑いてきたりしたら大変だと思ってさ、ガンガンと吠えちぎってやったよ。
そいつあんまり我が輩が吠えるもんだからビビっちゃってさ、またフワフワっと壁の方に飛んでったから、ま、許してやったけどね。

そしたらそこに、更衣室からキャバ嬢達がゾロゾロと出て来た。いっぱいガラクタ抱えてね。

「店長、お店ヤメたコとかの荷物はどーすればいいの?」
満里奈が段ボール箱にドレスとかハイヒールなんかを入れて持って来た。
「んなもん、とっとと捨てちゃって」
ローソク店長がやれやれってな感じでそーいうと、満里奈がいきなり「この写真・・・どうしよう・・・」って、お店の入口に飾ってある写真を段ボールから取り出したんだよ。

その写真見てみんなシーン・・・なんて黙りこくっちまってさ、威勢のいいローソク店長なんかもさすがに「うっ!」なんて言葉詰まらせちゃってるわけよ、その写真見て。

で、我が輩もどれどれってな感じでその写真を覗いてみたんだけど、こん時は正直言って全身に寒気が走ったね。
だって、その写真の女の子、すぐ後に立ってんだもん。
さっき我が輩が「あっち行け!」って追い払ったシクシク泣いてた女だよ。

ローソク店長が眉間にシワなんか寄せちゃって「んなもん、とっとと捨てちゃえよ、気持ち悪りぃ」なんて言うんだよ、本人、目の前にいるっつーのに。
あの女、もの凄い形相で店長を睨んでたよ。

そしたらミキちゃんがさ「お店の入口に飾っておこうよ。みんなと一緒に」って言ったんだよね。
我が輩、瞬間に「あ、マズイ!」って思ったね。
そーいう優しい事言うと、こいつら家まで付いて来るんだよな、図々しく。

そんなミキちゃんの優しい提案に、みんなが「そーしょう、そーしょう」なんて言いながらその写真を玄関に持って行ってさ、そしたらその女、フロアの隅っこから「みんなありがとう!」なんて顔してはまたワンワン泣き出したんだけどね。
しかし、そんなに甘くはなかったよこの店長は。伊達にローソク垂らしたりしてねぇよコイツ、本物のサドだ。

「んな、自殺してしまったよーな女を店の前に飾るんじゃねぇよ!客が気持ち悪がって来なくなるじゃねーか!」
なーんて怒鳴ってさ、ズカズカと店の前行ってその女の写真をバキっ!と剥がすと、そのままポイッとゴミ箱ん中へ捨てちまったんだ、やるねぇ~SM番長、本人が見てるとも知らないで。

するとここで黙ってられないのが我が御主人のミキちゃんなんだよな、この子、本当に優しい子だからさ、ミキちゃんが「店長ひどーい・・・」なんて言いながらゴミ箱のソレを取りに行こうとしたから、我が輩は「これ以上ヤツに情をかけると危険だぞ!」っと思って、わざと尻尾を踏まれたフリしてキャンキャンキャン!って床にひっくり返ってやったんだ。

そしたらミキちゃんは「あっ!ごめん、のぶゆき!」なんて言いながら、床で七転八倒する我が輩を抱きかかえてくれたんだな、その瞬間にシャブ中の満里奈が「じゃあアタシが家に持って帰るよ」って言いながらソレをゴミ箱から取り出したもんだからさ、ホント、セーフだったよ。
あんな物をマンションに持ち帰られた日にゃ、絶対にあの女も一緒に付いてくるからね、あんなシクシク女と一緒に暮らしてたら我が輩は気が狂って死んじまうとこだったよ、危ねぇ危ねぇ。

満里奈が写真を大事そうに胸に抱きしめると、そいつ、天井にフワフワしながらワンワンと泣いてたよ。
よっぽど嬉しかったんだろうな。

で、店を出て、皆がタクシーに乗り込んだ時、ちゃっかりあの幽霊、満里奈の隣りに座ってたよ。
嬉しそうな顔して満里奈に何か話し掛けてた。

そんな事は何も知らねぇ満里奈は、タクシーの中から我が輩に向かって「バイバイ」なんて笑って手を振ってたけどさ、ま、それが我が輩が満里奈を見た最後だったんだけどね。

満里奈、それから二週間後にシャブ打って電車に飛び込んで死んじまったよ。

あぁ、危ねぇ危ねぇ。

(4に続く)

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