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餓鬼3




一斉に窓際へと走った三人は、腰を屈めて息を潜めた。
ガラスがバリバリに割られた照明ブースの窓からソッと顔を出し、階下に広がる薄暗いボウリング場のホールを恐る恐る覗き込む。
『新春! 歌謡スターボウリング大会』と書かれた、ひと昔前の垂れ幕の下を、二つの影が恐る恐る歩いているのが見えた。

「爆弾でビビらせっか?」
正治は床に転がる黒いボウリングの球をスリスリと撫でながら哲雄を見た。
爆弾とは、ここからボウリングの球を落下させる事を言う。
大概の侵入者はその轟音に恐れをなし、一目散に逃げ出した。今まで彼らはそうやって侵入者を撃退して来たのだ。

ゆっくりとボウリングの球を持ち上げようとする正治に、哲雄は「待て!」と小声で止めた。
「よく見ろよ……あいつらカップルだぜ……」
哲雄のその言葉に、ボウリング球を持ち掛けていた正治は慌ててそれから手を離すと、「マジ?」と目を輝かせながら窓に身を乗り出した。

若いカップルだった。いかにも軽そうな女とチャラチャラした男。二人は、お化け屋敷に来たかのように恐る恐る周りを見回しながら進んで来る。
「ヤダヤダ怖ーい」
女がそう叫びながら男にしがみつくと、短いスカートから真っ白な太ももが露となり、覗き見していた小学生たちの鼻息を荒くさせた。
「あいつら……ヤルかな?……」
ニヤニヤと顔を綻ばせながら正治が呟いた。
「もちろん、ヤリに来たんだろ……」
哲雄が嬉しそうにそう呟くと、ミツオは既に興奮しているのか荒い口呼吸を激しくさせた。

若いカップルがコインロッカーの角を曲がって消えて行くと、三人は一斉に立ち上がった。
コインロッカーの角を曲がるとそこはビリヤード場だ。そこにはフカフカのソファーが並び、恋人同士がこっそりヤルにはうってつけの場所なのだ。
「行こうぜ」と哲雄が号令をかけると、正治は「待て待て」と言いながら、テーブルの上の四十二万円を味付け海苔の缶の中に押し込んだ。そしてそれを持って部屋の奥へと走り出すと、いきなり奥の壁の隅をスニーカーの踵でガン!と蹴飛ばした。
いとも簡単に壁の一部分が外れた。
その穴は彼らの金庫であり、同時に武器庫でもあった。

正治は急いで味付け海苔の缶を壁の穴の中に投げ入れた。そしてそのまま穴の中をガサゴソと漁りながら、「もしかしたらヤツラの仲間が来るかもしんねぇしな、用心用心」と笑い、中から黒光りした拳銃をゴソッと取り出したのだった。
その拳銃はもちろん玩具だった。
しかしそのエアガンは、正治の兄の友達のガンマニアが強力に改造したエアガンであり、その威力はビールの空き缶を軽く凹ませるほどの威力を持っていた。
一丁二万円。それを、引ったくりで貯めた金で三丁購入し、もしもの為にとこの武器庫に保管しておいた。こんな玩具でも、小学生の彼らにとっては実に心強い武器なのだ。

ミツオが「俺も!」と手を出した。
正治は一丁をミツオにポンッと放り投げると、もう一丁を哲雄に向かって放り投げ、そして最後の一丁を自分のズボンの腰の中にズボッと押し込んだのだった。


階段を降りてホールに出ると、レーンに塗りたくられていたオイルの残匂が緊張する三人の鼻を刺激した。
一歩進むごとに埃が舞う古いカーペットを三人は息を殺して進んだ。長く使われていないペプシの自販機の隙間に数匹の鳩が潜んでいるのが見えた。
コインロッカーの角で足を止めた哲雄は、後に控える二人に「シィー」っとジェスチャーすると、まるでアメリカの特殊部隊のように銃を構えながら壁に背を押し付け、奥の通路をソーッと覗き込んだ。
通路の奥に、四台のビリヤードの台とビリビリに引き裂かれたソファーが並んでいるのが見えた。しかしカップルの姿はどこにも見当たらない。

そんな無人のビリヤードコーナーを見つめながら、恐らく二人は奥のVIPルームに入ったんだな、と哲雄は思い、後の二人に無言で手を振りながら合図すると、そのまま腰を屈めて通路に躍り出たのだった。
足音を忍ばせながらビリヤードコーナーまで行くと、明らかにソレとわかる悩ましい声が奥のVIPルームから微かに聞こえて来た。

三人は必死に笑いを堪えながらも、慌てて入口すぐのビリヤードの台に身を隠す。
埃だらけのカーペットの上を匍匐前進しながら、ゆっくりと隣りのビリヤード台へと移動した。そうやって一台一台ビリヤード台を移動し、最後の台へと到着すると、女のその声はすぐ目の前から聞こえて来た。

そのビリヤード台の下を覗くとVIPルームが丸見えだった。
バリバリに破壊されたガラスのパーテーションの奥に、VIP専用のビリヤード台とバーカウンター、そして大きなソファーが並んでいる。
カップルはソファーに座っていた。
そのソファーはビリヤードの下から覗く哲雄達からは真正面に位置していた。
不意に哲雄の隣りにいた正治の鼻が「ふふふふふふ」っと小刻みに揺れた。正治が必死に笑いを堪えているのが哲雄に伝わって来る。

正治はこんな場面では必ず笑った。正治には、なぜか『笑ってはいけない場面』になると、いつもブハッ!と噴き出してしまうという変な癖があり、その度にいつも哲雄は釣られて噴き出してしまうのだ。
それは時と場所を選ばず、校長に叱られていようと、警察に叱られていようと、必ずプッとやらかし、その度に哲雄もミツオも釣られて笑っていたのだった。

それは、実の母親の葬式でも同じだった。祭壇横の親族席に座る正治は最初から最後までクスクスと笑いっぱなしで、焼香する時などは大声を出して笑ってしまい、それを咎めた坊さんに対しても、そのハゲ頭を指差して笑ってしまうほどだった。
そんな正治が、今、カップルのいやらしい行為を覗き見しながら「ふふふふっ」と鼻を揺らし始めている。
哲雄はそんな正治の頬を人差し指で突きながら、「笑うなよ!」と口パクで注意した。
しかし、そうされればされるほど正治は可笑しくなるらしく、慌てて踞った正治は喉をクックックッと鳴らし始めた。

そんな、いつ爆発するかもわからない正治を横目に、哲雄がビリヤードの台の下をソーッと覗き込むと、ズボンを膝まで下ろした男がソファーにふんぞり返り、その男の股間で女の茶髪が上下に激しく動いているのが見えた。
哲雄はそれがどんな行為なのか知っていた。それは、携帯のアダルト動画でよく見かける、例のシーンと同じだった。
男は女の茶髪が股間で激しく上下に動く度に、ソファーの上で身を仰け反らせていた。そしてそんな男の手が、女のミニスカートから伸びる真っ白な太ももの間に潜り込んで行くと、たちまち哲雄の心臓はドクドクと脈を打った。
男の手が侵入すると同時に、それまで閉じていた女の太ももがゆっくりと開いた。ポッチャリとした女の太もものその奥に、真っ赤なパンツが爛々と輝いているのが見えた。
男は迷う事無く真っ赤なパンツをズルッと下ろした。真っ黒なモサモサの陰毛が、まるで『飛び出す絵本』を開いた時のようにボワっと現れた。

哲雄は、女のソコを生で見るのは初めてだった。携帯のアダルト動画では何度も見た事はあるが、しかし携帯だと解像度が低い為にそこがどうなっているのかまで詳しく見る事は出来なかった。
しかし今、白い太ももの奥で、赤く爛れたワレメがパックリと口を開いているのをハッキリと見た。それはまるでナイフでスパっ!と斬り付けられた傷口のような、そんな痛々しい裂け目だった。

(あの中にチンポを入れるのか……)

そう興奮しながら哲雄が静かに唾を飲み込むと、ふいに隣りの正治が哲雄の肩を指先でトントンっと突いた。
哲雄がソッと振り向くと、そこには爆発寸前の正治が、下唇をギュッと噛み締めながら真っ赤な顔をしてブルブルと震えていた。

(バカ! 笑うな!)

そう口パクしながら正治をキッと睨むと、正治は今にも目玉が飛び出さんばかりの必死な表情で人差し指をブルブルと震わせながら、隣りにいるミツオをソッと指差した。
「ん?」と哲雄が正治の頭越しにミツオを見た。

そこにはボンヤリと虚ろな目をしたミツオがいた。ピコンっと勃起した小ちゃなチンポをズボンのチャックから突き出しながら、それを必死にシコシコとシゴきまくっていた。
瞬間、哲雄と正治の目が合った。正治はアゴをガクガクと震わせながら、声にならない声で「猿」と一言呟いた。
「ブッ!」
二人は同時に噴き出した。
強烈な可笑しさが腹の中で暴れ回り、呼吸困難に陥ってしまった哲雄は、声すら出ない状態のまま悶えながらカーペットの上を転がり回った。

「ギャハハハハハハハハハ!」と大声を出して笑う正治が「猿! 猿だ!」と叫ぶと、すかさずVIPルームから、
「誰だ!」
「誰よ!」
と、女と男がまるでハモるかのように同時に叫び、それが更に二人の笑いを沸き上がらせた。
「パシュ!パシュ!パシュ!パシュ!パシュ!」
狂ったように笑いまくる正治がカップルに向けてエアガンを乱射した。
プラスチックの弾がバスバスと音を立てながらビップルームの壁やクッションに食い込んだ。そのうちの何発かが男に命中したのか、男は「痛てっ!」と叫んでいる。

三人はエアガンを乱射しながら慌てて起き上がると、通路に向かって猛ダッシュした。
通路を走りながら、男が追いかけて来ないかと哲雄と正治は銃を構えたまま後を振り向いた。
すると、ズボンを膝まで下げたままのミツオが、股間で小ちゃなチンポをプラプラと揺らしながら必死な形相で走って来るのが見えた。

「ギャハハハハハハハハハハ!」
哲雄と正治が再び笑い出した。可笑しすぎて足がもつれ、二人は上手くは知れない。
通路の角で足を止めた正治が「おまえはベトナムの子供か!」とミツオにツッコミを入れると、哲雄の脳裏に、教科書に載っていた『ナパーム弾に逃げまとうベトナムの子供たち』の写真が浮かびあがり、もはや息もできないくらいに笑ってしまった。

「おまえら小学生だろ! どこの学校だ!」
そんな男の声が奥のビリヤードコーナーから響いて来た。男の姿が通路に出てくると同時に哲雄と正治は一斉にエアガンを乱射した。
が、しかし、その弾は通路の奥の男に届く前に、ズボンを膝まで下げてはモタモタと走ってくるミツオの体に食い込んでいたのだった。

(つづく)

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