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夏休みタイトル18




敏光を長屋の路地に連れ出した僕は、敏光の耳元に「ヤバいぞ!」と囁いた。
しかし敏光はそんな僕の焦りをあざけ笑うかのように、プッ、プッ,とスイカの種を二つ吹き出した。

「おっちゃんの事だったら心配すんな。もうちゃんと手は打ってある」

敏光はそう言いながらニヤリと笑うと、隣の家の盆栽の中に喰い散らかしたスイカの皮を押し込んだ。
そして「ま、ついて来いよ」と笑いながら歩き出したのだった。

そこは廃墟のラブホテルの駐車場にある秘密基地だった。
僕達のグループはスーパーの裏にある巨大ボイラー群の中に秘密基地を持っているが、この廃墟のラブホの秘密基地は、昨夜、盗んだプラモデルを隠す為に急遽作った二人だけの秘密基地だった。

裏口を塞ぐ『大山建設管理地』と書かれたベニヤ板には、猫が一匹通れるだけの隙間があった。
ベニヤ一枚を挟んだ向こう側は、まさに別世界だった。
殺伐とした駐車場には、まるで密林のジャングルのように雑草が生い茂っていた。
錆びたドラム缶、乱雑に放置された建築資材。そして、誰が何の為に放火したのか、真っ黒に焼け焦げた軽自動車が雑草の中に潜んでいた。

そんな駐車場を、背丈程もある雑草を掻き分けながら進むと、『605号室』と書かれたプレートが見えて来た。
一階が駐車場で二階に部屋があった。
駐車場の壁には『ご休憩30分2千円・カラーテレビ付き』と書かれたプレートがぶら下がっている。

この605号室の駐車場が、僕と敏光の二人だけの秘密基地だった。
駐車場には二階に繋がる階段もあったが、しかし、僕達は敢えて一階の駐車場だけを秘密基地にした。
なぜなら、この廃墟のラブホは『自殺の名所』として近所では有名な場所であり、つい先日も203号室の浴室で、ホームレスの首吊り死体が発見されたばかりだったからだ。

そんな駐車場の奥に、ホテルで使われていたガラクタが山のように放置されていた。
割れたシャンデリア、破れた枕、ブラウン管の割れたテレビ、ヨーロピアン調の棚……。
そんなガラクタの中に、僕達は盗んだプラモデルを潜り込ませていたのだった。

敏光は意味ありげにニヤニヤと笑いながらそれらガラクタを漁り始めた。
そんな敏光に、僕は埃だらけの布団を剥ぐりながら「プラモはここだよ」と、昨夜盗んだプラモデルを見せた。
すると敏光は、更に意味ありげに「ふふふふふっ」と笑いながら、別の場所をガチャガチャと物色する。

しばらくそんな敏光を見ていた。
敏光の事だから、きっと何か理由があるんだろうと、ガラクタが取り除かれて行くのを黙って見ていた。

すると、遂に敏光が何かを見つけ出した。
敏光は豪快に笑いながら「どうだ!」と僕にソレを突き付けた。
そんな敏光の手に握られていたのは、なんと、ランボルギーニ・カウンタックのラジコンではないか。

僕は素直に興奮した。
そのキラキラと真っ赤に輝くカウンタックのボディーを見つめながら「どうしたのこれ!」と大きな声で叫んでしまった。
すると敏光は「達也のはコッチだ」と言いながら、もう一台のラジコンを取り出した。
それは、僕が夢にまで見たフェラーリーのラジコンだった。
呆然とする僕の目の前で、敏光は更にもう一台出した。

「これは弟のだ。でも、あいつはバカだから、すぐに人に喋っちゃうからまだあげない」

そう笑いながら黄色いポルシェのラジコンを僕の足下にソッと置いた。

「と、敏光……これ、盗んだのか?……」

僕の声は震えていた。
プラモデルとラジコンでは値段が違い過ぎるのだ。
このラジコンなら、三台で、少なくとも二万円はするだろう。
これは、もはや、万引きという枠を超えているのだ。

そう脅えていると、敏光は僕のそんな心情を察したのか、「心配すんな」と呟いた。
そして、リモコン機を手にすると、カウンタックの後輪をギュンギュンと空回りさせながら、「おっちゃんから貰ったんだよ」と、ニヤリと怪しく笑った。

「貰った?」

「そう。貰ったんだ……」

そう頷きながら、敏光は言葉を続けた。

「さっき、店におまわりがいただろ。俺、皆が見ている前でそのおまわりに『盗んだのは俺だよ』って言ってやったんだ。そしたらさ、おっちゃんがいきなり焦り始めてさ、もういいから帰ってくれっておまわりを返しちゃったんだよな」

敏光は、その時のおっちゃんの顔を思い出すようにケラケラと笑った。

「おっちゃんは、俺がおまわりに捕まる事で、昨日の母ちゃんとの関係がバレると思ったんだろうな、はははは、おっちゃん焦りまくってさぁ、で、口止め料ってことでこの三台をくれたってわけさ」

そこには、あの明け方の神明橋で、もう家には帰りたくない、と泣いていた敏光はいなかった。
今、僕の目の前でこうしてケラケラと笑っている敏光は、いつもの自信に満ち溢れたガキ大将そのものだった。

(つづく)

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変態性欲者

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