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夏休み子供劇場2・夏休み

2012/05/31 Thu 00:13

夏休みタイトル2



今年四十五才になるおっちゃんは未だ独身だった。
二年前、相次いで両親が亡くなり、一人っ子だったおっちゃんはこの店舗兼用の自宅で一人で生活するようになった。

おっちゃんは、若い頃は名のある旅館で板前をやっていたらしいが、今じゃ子供相手に安い文房具を売って生活する貧乏なおっちゃんだった。
いつも文具店の奥の居間でテレビばかり見ていた。
板前をやっていたくせに、いつも近所のスーパーで出来合いのお惣菜を買い、それを肴に昼間っからビールばかり飲んでいた。
昼間はほとんど家から出る事も無く、夜になると近所のスナックにいそいそと通っていた。
おっちゃんはそのスナックで働いているフィリピンの女の人の事が好きらしく、そのスナックに行く事だけが唯一の楽しみのようだった。

そんなおっちゃんを近所の大人達は『ちのうおくれ』と呼んでいた。
裏の板金屋のデブ社長も、角のタバコ屋のヒステリーおばちゃんも、そして向かいの電気屋の親父も、口を揃えておっちゃんの事をバカだとかダメ人間だとか変態野郎だと罵っていた。

おっちゃんがバカなのかダメ人間なのかは僕達にはわからなかったが、ただ、おっちゃんが『変態野郎』である事だけは知っていた。
それは、居間の奥の六畳間の座敷の押し入れの中に、大量のエロ本が隠されている事を僕達は知っていたからだった。

その押し入れの中のエロ本を最初に発見したのは敏光だった。
あれは、一ヶ月程前の事だった。
少年野球の練習がいつもより長くなった夕暮れの帰り道、泥だらけの僕達はいつものようにおっちゃんの文具店に飛び込んだ。

まるで餓えた餓鬼のように駄菓子やチェリオを貪り取った僕達は、「おっちゃーん」と居間に向かって叫んだ。しかし待てど暮らせどおっちゃんは現れない。

「いつもより遅いから、酔っぱらって寝ちゃったかも知れねぇな」

そう呟きながら敏光が居間の戸をガラガラっと開けた。
居間はシーンと静まり返っていた。
卓袱台の上には喰い散らかしたスナック菓子が散乱し、まだ夕方の五時だというのにビールの空き缶が十本転がっていた。
柱にぶら下がる時計の針の音だけがカチカチと淋しく響いていた。
敏光は奥の座敷を覗き込みながら、敷かれたままの布団に向かって「おっちゃん、寝てんのか」と叫ぶ。
二、三回そう呼びかけた後、敏光は泥だらけのスニーカーを乱暴に脱ぎ捨て、勝手にドカドカと家の中に上がり込んだ。

夕日に照らされた奥の座敷はオレンジ色に輝いていた。
家具ひとつない殺風景な六畳間の真ん中で淋しくポツンと敷かれた万年床。

敏光は「おっちゃん」と呟きながら、やけに薄っぺらい掛け布団を剥いだ。
布団の中には脱ぎ捨てたジャージがポツンと丸まっているだけだった。

「おっちゃんいねぇーよ」

敏光は「ちっ」と舌打ちしながらそう呟き、「どっかに隠れてんじゃねーのか」と押入れの襖に手を掛けた。

ガサガサガサっと鈍い音を立てながら青帯の入った襖が動いた。
襖を開けた瞬間、中を覗いた敏光が「すげぇ!」と驚いた。
敏光のその声に誘発された僕達は、好奇心で輝く目をギラギラさせながら奥の座敷に乱入した。

そこで僕達が見た物は、オレンジ色の夕日にギラギラと照らされた大量のエロ本だった。

(つづく)

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