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コブラ10




              28


 彼女のそんな気持ちはわからないこともなかった。
 彼女は保護房と言う狭い部屋に4日間も閉じ込められていたのである。しかもそこは二十四時間態勢で監視されており、そのカメラから逃れる場所はその部屋にはどこにもなく、掛け布団もないそこでは布団に潜り込むことすらできない状態なのである。
 そんな空間に4日間閉じ込められれば、当然ストレスは溜る。本もなければテレビもない、室内運動も禁止で、言葉を交わす相手もいない。そんな空間で唯一出来る事と言えば「空想」だけだった。
 そんな空想は、ストレスが爆発寸前の精神異常者にとったら危険極まりないものだった。そう、それはまるで患者に刃物を渡すようなものなのだ。

 凶暴性のある患者は、そんな制圧された空想の中でひたすらに人を殺し続けるという。そんな恐ろしい空想は一時的にクスリで抑えられるが、しかし、クスリが切れて現実に戻ると再びその空想は甦り、いつしか患者の頭の中では現実と空想が一緒になってしまうのだ。
 それと同じように、この時のあずみちゃんの精神状態というのは、溜まりに溜ったストレスが爆発寸前となっているに違いなく、凶暴性のない穏やか系狂人のあずみちゃんは、人を殺し続けるという物騒な空想はしないものの、しかし、好きな物を食べまくるという「食欲」や、強制的に監禁されていた場所からの「解放欲」、そして、若い身体と精神に宿る「性欲」を、この閉じ込められた狭い部屋でムラムラと空想し、それをおもいきり発散させたかったと思っていたに違いないのだ。

 僕はそんな事を思いながらモニターに映る彼女を見つめ、もし自分がこんな立場に置かれていたとしたらば、やっぱり僕も浴室でセンズリこいてスッキリしたくなるだろうなぁ、と、そんな彼女の気持ちに感情移入した。

 そんな彼女は、浴室の低い椅子に腰掛けたままスラリと伸びる細い足を大きく広げ、その中心に勢い良くシャワーを吹き掛けていた。
 その部分がカメラでは見えないのが残念だが、しかし、時折モニターのスピーカーから聞こえて来る彼女のススリ泣くようなアエギ声や、飛沫をあげて吹き出すシャワーの音などから、今、彼女のアソコがどんな状態になっているかが手に取るように想像できた。

 僕はそんな彼女のアソコをリアルに想像しながら、彼女のパンツにこびり付くアソコから滲み出た分泌物をジワジワと舐め、そしてペニスをシゴいた。いっその事、そのまま全裸で浴室に侵入し、その既にヌルヌルに緩んでいるであろう彼女の穴におもいきりペニスをぶち込んでやろうかとも考えたが、しかし消灯時間まであと三十分しかない、消灯時間までに彼女を保護房へ返さなければまずいのだ。残り時間30分しかない今、ここでそれを実行するにはあまりにも無謀過ぎた。

 シャワーを股間に押しあてるあずみちゃんは、いきなり椅子の上で腰をエビ反りにさせた。プリンっと丸い尻が突き出し、その小さな肩が小刻みに揺れている。

(イクのか?・・・・)

 僕はそう思いながら慌ててティッシュを大量に抜き取り、僕自身も発射準備に備えた。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」

 浴室に、初めて「声」らしい「声」が響いた。
 椅子に座るあずみちゃんの左足の指が、タイルの上でピーンと爪先立ちになりツルツルの足の裏を露出した。椅子にしゃがむ膝がヒクヒクと痙攣し、その瞬間、真っ白だったあずみちゃんの肌が一瞬にして桜色に火照った。

「あぁぁん!」

 最後の言葉を振り絞ったあずみちゃんは、そのままガクリと力が抜け、持っていたシャワーをカタンと手放すと、シャワーはまるで尻尾を掴まれた蛇のようにあずみちゃんの足下でクネクネと暴れ回った。

「うっ!」

 少し遅れて僕が発射した。せっかくならあずみちゃんと同時にイキたかったが、しかし僕はセンズリではいつもギリギリまで引っ張る癖があり、そのせいでいつもAVでセンズリする時には、顔射をされるAV女優の顔がジワジワとフェードアウトしていくシーンで射精してしまい、最後のテロップに映し出される「宇宙企画」という文字でフィニッシュしてしまう事が多々ある。
 しかし今回は、あの忌々しい「宇宙企画」や「企画/制作・桃太郎映像出版」といったテロップはモニターには出て来なかった。だから僕は、オナニー後のあずみちゃんの気怠いシーンを堪能しながら、シミジミと射精の快楽を味わう事ができたのだった。

 オナニーを終えたあずみちゃんは、しばらく自分の股間をジャブジャブとシャワーで洗い流していた。その際、彼女の腰がピクッ!と反応していたのは、イッたばかりのクリトリスが敏感だったからであろう。
 そんなあずみちゃんは股間を洗い終えると、そのままドボン!と大きな浴室に飛び込んだ。たっぷりのお湯の中に唇まで浸かったあずみちゃんは、「♪ふんふん♪ふふん♪」と御機嫌に鼻歌を歌い始める。

 可愛い。さすがは女子高生である。つい今さっき、シャワーをオマンコに噴射しては“オナる”と言う日活ロマンポルノ的な卑猥なアクションを起こしておきながらも、しかし、すぐにこうやってジブリ的な「可愛らしさ」を見せてくれるとこは、やはり女子高生である。これが三十過ぎたババアだと、いつまでもその余韻をダラダラと引きずり、再び浴槽の中で股間に手を伸ばすと言う「しつこさ」を見せるものだが、しかし女子高生はやっぱり違う。なんといっても「行為後」が可愛くて爽やかで、中年ババアの「行為後」のような罪悪感は微塵も感じさせないのである。

 そんな爽やかなあずみちゃんは、浴槽の中に前園さんの「名湯の湯」をサラサラサラっと溶かし、湯を細い腕で掻き回しながら、深呼吸するかのようにその香りを吸い込み、そして「うふっ」と白い歯を見せて笑った。
 彼女のその「うふっ」を確認した後、手の平の中にパンティーをギュッと握りしめた僕は、再び脱衣場へと向かった。浴室から聞こえて来る彼女の鼻歌を聞きながら脱衣場に潜入した僕は、浴室に向かって「そろそろ消灯の時間だよ~」と声を掛けながら、そのどさくさに紛れて彼女の下着を洗濯機の中に落とした。

「ふぁ~い・・・・」

 浴室から聞こえて来た彼女の可愛らしい返事にはエコーが効いていた。
「ねぇ・・・・」
 僕はそんな浴室の磨りガラスに向かって声を掛けた。
「なぁにぃ~」
 あずみちゃんはお湯をチャプチャプさせながら答えた。
「この後、何か冷たいモノでも用意するけど何がいい?」
 僕はまるで新婚の旦那様のようだ。
「えっ!いいの?」
 彼女は嬉しそうに叫ぶ。同時に湯船のチャプン!という音が聞こえた。
「プリンとヨーグルトがあるんだけどどっちがいい?」
 そんな事、そこでいちいち聞かなくてもいい事なのだが、しかし、これはここで聞く事に意義があるのであって、まるで、付き合い始めたばかりの恋人同士のようなこの甘い雰囲気を僕は味わいたいのであって、僕はこういった甘い雰囲気はこういった形でしか味わう事が出来ないんだから、読者諸君よ、こんな不自然なラブ&ピースを許してくれたまえ・・・。

「プリン!」

 あずみちゃんは、幼稚園児に「これなぁーんだ?」と画用紙に書いたアンパンマンを見せた瞬間、幼稚園児が自信満々に「アンパンマン!」と叫ぶかのような、そんな絶対的な口調で「プリン!」と僕に叫んだ。
 あずみちゃんのその声は普通の女子高生であって、精神病院の特別病棟に隔離されている女の子とは思えなかった。
 僕はそんなあずみちゃんに「じゃあプリンを用意しておくから早く出ておいで」と、日光東照宮に新婚旅行でやってきた青髭ビッシリの馬ヅラ旦那さんのようなそんないやらしい口調で浴室のあずみちゃんに微笑んだのであった。

 風呂から上がったあずみちゃんは、火照った顔からホカホカと湯気をあげながら管理室へとスキップしながらやって来た。
 あずみちゃんが着ている洗濯したての院内着は強力な洗濯糊がバリバリしており、それはまるで安い温泉宿の浴衣のようだった。
「はい・・・」っと僕がプリンとスプーンを差し出すと、あずみちゃんは「ありがとう・・・」っと目を輝かせながら火照った手でそれを受け取った。
 さっきと同じように事務椅子の上で両足をブラブラさせながらプリンを食べるあずみちゃんは、まるでアニメに出てくる美少女そのものだった。
 そんなあずみちゃんをソッと見つめながら、僕は、あずみちゃんのパンティーのシミと、そして今までこのモニターに映し出されていたシャワーオナニーシーンを思い浮かべ、濃厚なゾクゾク感に包まれていた。

(僕はキミの秘密を2つも見たよ・・・)

 僕は心の中でソッと呟きながら、あずみちゃんを見る。そんな僕と目が合ったあずみちゃんは、「うふっ」と微笑みながら小さなスプーンでプリンを掬い、そして、なんとそのプリンを掬ったそのスプーンを僕の口元にひょいっと向けては「はい」と優しい笑顔を見せた。

 僕は瞬間的に猛烈な幸福感に包まれた。これほどまでの幸福感は、その昔、まだ僕が准看護士時代、深夜の病院の倉庫でオナニーをしている所を夜勤の看護婦さんに見つかり、その時、いきなりその看護婦さんから「舐めてあげよっか」と言われては思う存分ペニスを舐め尽くされ、精液を1滴残らず吸い取られたあの時以来の幸福感だ(但し、その時のその看護婦は定年間近の56才の古株で、彼女は僕のペニスを舐めながら何度も何度も入歯をカパッ!と外したりしては僕を爆笑させた)。

 目の前に優しく差し出されたプリン。そのスプーンはあずみちゃんが今までその愛くるしい唇で散々舐めていた唾液たっぷりのシロモノだ。そんな甘い経験をこの28年間1度も経験したことのない僕は、そんな甘い幸福を目の当たりにしながらもモジモジと脅えしまった。

「おいしいよ?」

 あずみちゃんは僕の口の前にスプーンを突き付けたまま、子猫のように首を傾げた。

「・・・・い、いいの?」

 恐らくその時の僕の顔は、バカみたいに弛んでいた事だろう。そんなバカヅラ下げた僕があずみちゃんにそう聞くと、あずみちゃんは「うん」とひまわりのような笑顔を見せた。
 僕は恐る恐る唇を少しだけ開けた。その唇は、情けない事にブルブルと震えている。ふいに、波平の御先祖様が僕の頭上にポワンっと現れ、「大人のくせにこんなことくらいでいちいち怖がるな!この臆病者!」と、なぜかプンプンと怒り出し、僕は関係のない磯野家の御先祖に叱られた。

「はいっ」

 あずみちゃんは僕の唇の隙間にスプーンをツルンっと入れた。口内に入って来たスプーンを慌てて唇で押さえ込み、スプーンの上のプルプルのプリンを素早く舌で掬い取る。そう、今まであずみちゃんのパンティーに付着する分泌物をベロベロと舐めていた不浄なその舌で・・・。
 そんな僕の舌に、プリンの甘さとスプーンの金属的な感触が広がった。もう少しそのスプーンを舐めていたかったが、しかしあずみちゃんは「おいしいね」と笑いながら、無情にも素早くスプーンを抜き取り、その僕の不浄な唾液がたっぷりと付着するスプーンで再びプリンを掬っては、それを人形のように可愛い口の中にツルンと運んだ。

(これが噂に聞く間接キッスというやつか・・・・)

 どこでどう噂になっているのか知らないが、僕は中学生の時から憧れていた「好きな子との間接キッス」を28才になった今、この精神病院の特別室で、精神病の患者と、やっと告げる事が出来たのだった。

 そんな幸せを噛みしめていると、病棟のスピーカーからパッヘルベルの「カノン」が鳴り出し、狂った患者達に消灯を告げた。

 僕はもう少しこの甘い時間を過ごしていたかったが、しかし、本棟から監視カメラで監視されている保護房の彼女をこれ以上ここに引き止めておく事は出来なかった。
「部屋に戻ろうか・・・」
 僕は、椅子に座ったまま悲しそうな表情で僕をジッと見つめているあずみちゃんからソッと目を反らしてそう告げた。

「まだ帰りたくない・・・・」

 あずみちゃんは駄々をこねる子供のように、椅子の上で足をバタバタさせた。
 僕だって帰したくないよ!・・・・
 そう心で叫びながら、僕は彼女の細い肩をポンッと叩いた。彼女は諦めたかのようにバタバタさせる足を止め、静かに立ち上がった。
 そして僕の顔をジッと見つめながら「もう自殺とかしないから、絶対に約束するからここにいちゃダメ?」と、今にも泣きそうな声でそう囁いた。僕の胸にグッと熱いモノが込み上げて来た。「いいよ、もうあんな地獄のような部屋なんかに帰らなくていいよ、このまま僕とどこか遠い所へ行こう」。僕は泣き出しそうな彼女を見つめながら何度も何度もそう心で叫んだ。
 ふいに彼女の真っ白な頬にポロッと涙が溢れた。
 僕はその瞬間、無意識に彼女を抱きしめた。

「あそこに戻りたくないよぅ・・・・」

 彼女は僕の胸に顔を押し付け、声をあげて泣いた。
 抱きしめる彼女の濡れた髪から、安物のシャンプーが漂って来た。僕は力一杯、彼女の小さな体を抱きしめた。
 そして彼女の涙で濡れた頬に静かに唇を押しあてると、「大丈夫・・・必ず僕が助け出してあげるから・・・それまで少しだけ我慢するんだよ・・・・」と、優しく呟いた。
「ホント?」
 彼女は僕の胸に押しあてていた顔をパッと離すと、僕を見上げながら真剣な目をして呟いた。
「うん。約束する」
 僕は彼女の大きな瞳を見つめたまま、強く頷いた。

「じゃあ帰ろっ」

 突然彼女は、僕の身体からスッとすり抜けると、僕はまさしく吉本新喜劇のそれのようにズルッとした。
 あずみちゃんは、今までのキミのその涙は何だったんだ!と言いたくなるくらいに普通に戻り、そして相変わらず「♪ふんふん♪ふふんふん♪」と鼻歌を歌いながら、勝手に保護房に向かってスタスタと歩き始めた。
 おいおいちょっと待ってくれよ、いくら躁鬱病だからって、これじゃあまるで、今までのこのシーンが韓流ドラマのようにとっても恥ずかしいじゃないかよ・・・・
 僕はそう思いながらトホホっと項垂れ、恥ずかしそうにしながら彼女の後に付いて保護房へ向かった。

 あずみちゃんは保護房の中にピョッンと飛び込むように入ると、着地と同時にクルッと僕に体を向けた。
 そんなあずみちゃんの顔に苦笑いしながら僕が静かにドアを閉めようとすると、あずみちゃんは小さな声で「絶対だよ」と呟いた。

「えっ?」

 僕は扉を閉めようとしていたドアを途中で止めた。

「や、く、そ、く」

 あずみちゃんは監視カメラに声を聞かれないように囁くような小さな声でそう呟くと、おもいきりヒマワリのような笑顔で笑ったのだった。



 そんなあずみちゃんとの約束を果せないまま月日は過ぎて行き、いよいよあずみちゃんが保護房から出られる日が近付いて来た。
 その日、僕と前園さんが患者のカルテを整理していると、ふいに管理室の窓を鏡嶋主任が覗いた。
「明日、保護房の患者を一般室に移動するから」
 鏡嶋主任は監視窓からそれだけ伝えると、「それじゃあ、あとヨロシク」っといつものように5時きっかりに病棟を出て行った。

「ふーっ・・・・・」
 前園さんが患者のカルテが保管されているファイルをパタンと閉じると深い溜息を付いた。
 ふいに鏡嶋主任からあずみちゃんの移動を聞かされ、いよいよ明日の夜勤であずみちゃんとひとつになれると内心爆発しそうなくらいに喜んでいた僕は、そんな前園さんに内心を悟られないよう「どうかしましたか?」と平然とした表情で聞いた。

「うん・・・いよいよだなぁって思いましてね・・・・」

 前園さんはそう呟きながら、妙に暗い表情で煙草をソッと銜えた。
「・・・いよいよって何がですか?・・・・」
 僕はその妙に暗い前園さんの表情が気になり、カルテを捲っていた手を止めて前園さんに振り返った。
「保護房の彼女、明日、転房なんでしょ・・・・」
 前園さんは、管理室から見える保護房のあずみちゃんをアゴで指しながらそう呟いた。
「・・・それが、どうかしましたか?・・・・」
 首を傾げながらそう聞く僕に、前園さんは、「うん・・・」っと低く呟き、そしてゆっくりと煙を吐きながら口を開いた。

「・・・新入りはね、まずは最初に中村が喰うことに決まってるんですよ・・・・だから、我々に回って来るのは中村の洗礼を終えてからだから、まだまだ先の話です・・・。っていうか、中村はかなりあの娘を気に入ってますからね、恐らく中村は八号室の女みたいに彼女を独占してしまうでしょう・・・だから、まず我々には回って来る事はありませんよ・・・」

 前園さんは重苦しくそう話すと、言葉の途切れでスっと煙草を吸った。
 前園さんの話しを聞いていた僕の脳裏に、瞬間、あの八号室の患者に殺人的な性的拷問をしていた中村の鬼のような表情が浮かんだ。

 保護房では、何も知らないあずみちゃんがデタラメなヨガをしながら、歪なポーズのままドテッと床に尻餅を付いては「えへへへ」っと1人で恥ずかしそうに笑っている。そんな彼女を目にした僕の膝がとたんにガクガクと震え出した。

「それはいいんです。私たちに彼女が回って来なくてもそれはいいんですが・・・ただ、中村は若い女には手加減しないんですよ・・・・」

 僕はそんな前園さんの顔を「はっ」と見た。っという事は、八号室のあの拷問は、あれでも手加減していたということなのか?・・・・・

「中村にはね、丁度、彼女くらいの歳の娘が1人いるんですよ・・・・その娘と最後に面会した時に、娘から『お父さんなんか死んでしまえ!』とかなりの暴言を吐かれたらしくてね・・・それからですよ、中村が若い女を目の敵にするようになったのは・・・・」

 僕は絶句した。確かに、血が繋がっていない僕でも中村のような外道には「死んでしまえ」と言いたいくらいだ。だから実の娘ならば、そんな父親を「殺してしまいたい」と思うのはそれは当然であろう。そんな中村の娘の気持ちは痛い程わかる、わかるのだが、しかし中村。嗚呼中村。あいつはなんという糞野郎なんだ。娘にそう言われただけで、それをいつまでもウジウジと根に持ち、しかも、関係のない他人の若い女にその鬱憤を晴らしているとは、あいつはなんという腐れ外道なんだ。

 僕はそんな怒りを感じながらも、あずみちゃんが中村に虐待されるシーンを思い出しては心底震えた。

「あの娘、可愛いから・・・・恐らく、相当な事をされると思いますよ・・・可哀想に・・・・」

 前園さんはそう言いながら、煙と同時に再び深い溜息を付くと、「可哀想だけれど何もしてやれないんですよ・・・」、と諦めの表情のまま、また患者のカルテのファイルを開いた。

 僕は、膝をガクガクさせながらも、そんな前園さんから目を反らし項垂れた。そして震える膝をジッと見つめていた僕は、その顔を恐る恐る保護房へと向ける。
 すると、保護房から管理室をジッと見つめていたあずみちゃんとふと目が合った。僕はあずみちゃんのその澄んだ瞳を直視する事が出来なかった。
 そんなあずみちゃんの目からソッと目を反らそうとすると、ふいにあずみちゃんの口がパクパクと動き始めた。
「ん?・・・・」
 あずみちゃんは何か言っているようだ。僕はあずみちゃんのその口の動きをジッと見つめ、その言葉を読み取った。

「や、く、そ、く」

 確かにあずみちゃんの口はそう動いていた。
 あずみちゃんは僕がその言葉を読み取った事を確認すると、再び我流で考え出したデタラメなヨガを始め、奇怪なポーズででんぐり返しをし、床のスノコに後頭部を激しくぶつけた。
 僕はそんなあずみちゃんを見つめていると、突然あの時に食べた甘いあま~いプリンの味が口の中に広がった。そんなあの時の甘くやるせないプリンの味をリアルに思い出しながら、僕は彼女をこのまま見捨てる事はできないと強く思った。

 そんな僕は保護房ででんぐり返ししているあずみちゃんに向かって小さく小さく唇を動かした。

「りょ、う、か、い」

(つづく)

《目次に戻る》 《第11話へ続く》



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